<広島6-0阪神>◇22日◇マツダスタジアム

 「正義の味方」が帰ってきた。広島のアンパンマンこと松山竜平外野手(28)が1軍復帰戦となった阪神戦で、2打席連続適時打を放って勝利に大貢献だ。広島市の土砂災害を受け、鳴り物なしで行われた特別な試合で、自らの復活を祝うとともに、悲願のVへ望みをつなぐ働きを見せた。

 ♪そうだ

 うれしいんだ

 生きるよろこび

 たとえ

 胸の傷がいたんでも

 丸顔から「アンパンマン」のニックネームを持つ松山が復帰戦で大暴れだ。1回2死一、三塁で阪神藤浪の初球、低め152キロ直球を中堅左にはじき返す先制打だ。さらに1点リードの3回2死一、二塁では中越えの2点二塁打を放ち、勝利に貢献した。

 「緊張しました。とにかく振っていこうと思っていた。復帰して最初の打席が適時打になってよかった。バッティングはよかったと思いますけど…」

 笑顔を見せたが、アンパンマン同様、かっこいいばかりではない。1回、先制打の際には、走者のキラが止まっているのに猛然と二塁に走り、仕方なく三塁へ出たキラがアウトに。守備でも土壇場9回、1死一塁から右翼線の当たりを二塁打にしてしまった。

 「走塁は緊張して前を見ていなかった。守備は力不足です。もっと練習します」。そう話す松山に、復帰戦で5番を任せた野村監督も「分からん選手やな~。上がってすぐに打つのはすごいけど」と苦笑した。

 6月13日西武戦の右翼守備中に負傷し「左膝内側側副靱帯(じんたい)損傷」と診断された。その時点で打率3割4厘、5本塁打と右翼の定位置を狙っていた矢先の戦線離脱だった。

 それから約2カ月。リハビリ、練習再開とともに取り組んだのが体重制限。患部に負担をかけないため、ベスト93キロのキープに努めた。白米の上に白滝を乗せ、たくさん食べた気分になった。おかずは鶏のささみ、野菜中心に心掛けた。

 復帰戦はチームにとっても、地元にとっても大事な試合だった。20日未明に発生した土砂災害。試合前に黙とうをささげ、半旗を掲げ、喪章で臨んだ。

 「ニュースで見て、大変なことになっているなと思います。被災された方々のためにも、ファンと一緒に優勝を目指したい」。23年ぶりの悲願へ。帰ってきた「正義の味方」も、残り試合に力を尽くす。【編集委員・高原寿夫】