<ソフトバンク9-3日本ハム>◇28日◇ヤフオクドーム

 日本ハム大谷翔平投手(20)の一発も空砲に終わった。1点を追う5回に右翼席へ同点の7号ソロを放った。これで勢いに乗り、大引の2ランで勝ち越したが、6回に2番手カーターが4安打4失点と打ち込まれ逆転された。8回にも3点を失い、終わってみれば6点差の完敗。連勝は4でストップし、今季最多の貯金5を逃した。

 やるせなく、重い空砲だった。大谷が二刀流の威力を発揮したが、はかなく散った。1点を追う5回。岩崎のフォークを右翼席へ運んだ。同点ソロ。その後に大引の一時、勝ち越し2ランが生まれる呼び水になったが、連勝は止まった。「できれば3タテしたかった」。無念さを隠し、本音を吐露した。投打でフル回転した3連戦。投手、野手で2度目のヒーローの座を手中に収めながら、逃した。

 勝負手だった。同一カードで二刀流。DH制がないパ本拠地の交流戦ではあったが、投手と野手で明確に区分しては今季初の起用だった。今カード全勝して5連勝すれば、今季最多の貯金5へ到達できる大一番。栗山監督は「いきまくるしかない」と2度繰り返すほど、全身全霊の用兵。そのジョーカーが「5番DH」の大谷だった。中軸に配してもらった期待に応え、躍った。

 今カード初戦で10勝を挙げ、登板翌日の前日27日。指揮官と2人で話し、この日の中1日での野手出場が内定していた。投手で5戦ぶり、後半戦初白星を挙げ、再浮上のきっかけをつかんだばかり。投手尊重なら疲労軽減を優先させ、休養の選択肢もあった。栗山監督も「合っているか、間違っているか分からないけれど」。大谷は公式戦フル出場を理想とする。今季も常に出場意欲を見せ、欠場なら時にむくれたが、望み通りのタクトに会心の仕事で報いはした。

 生命線の投手を中心にした守備に精彩を欠き、自滅に近い形で逆転負けした。「1発で流れができたと思った」。栗山監督が勝利を確信するほどの展開へ、大谷が持ち込んだが結果は無情だった。「切り替えてやっていくしかない」。20歳の至宝は気丈に現実を受け止め、試合後も汗をしたたらせ気持ちを整理した。一振りに込めた気概だけは、収穫だった。【高山通史】

 ▼大谷が今季7本目の本塁打。既に投手で10勝を挙げているが、10勝以上をマークした投手の同一シーズンの本塁打数では50年藤本英雄(巨人=26勝、7本塁打)に並ぶ史上最多。初の10勝&10発へあと3本とした。