<中日5-6広島>◇29日◇ナゴヤドーム

 追いつかれても突き放す。広島が中日との延長戦を制して首位巨人に食らいついた。先発のルーキー大瀬良大地投手(23)が6回3安打無失点の好投。終盤に追いつかれたが、延長11回相手ミスとルーキー田中広輔内野手(25)の、この日2本目の適時打で突き放した。チーム今季60勝目を挙げた。

 粘り強さなら負けない。延長11回、相手ミスから再び勝ち越した。終盤に追いつかれ延長に突入。10回、1度は勝ち越したが、ミコライオが逃げ切りに失敗。仕切り直しの11回、先頭丸が中前で出塁して突破口を開き、3点を奪った。首位巨人、2位阪神がすでに勝っていた。離されるわけにはいかなかった。先発大瀬良の好投も報われた。

 逆球があった。浮き球もあった。それでもルーキーは直球を信じた。1回2死一、三塁、ルナを外角144キロで空振り三振。2回無死一、三塁でも恐れず直球を投げ込み無失点で切り抜けた。3回以降の4イニングは完全投球。2点リードの7回2死満塁に代打を送られたが、6回92球を投げて3安打無失点。今後に光をともす投球となった。

 「3回からストレートでしっかり押せていたので、テンポというより、自分らしくいこうと思った。点を取ってもらったので、同点になるまでは腕を振ってストレートで押していこうと思っていました」

 約2週間前、タブレット端末「iPad(アイパッド)」を電撃購入した。スポーツ動作分析アプリの「Uber

 sense」を使用するためだ。「三浦さん(アスレチックトレーナー)に教えてもらったアプリです。あまり状態が良くない時もあるし、いい時と悪い時を比較できるということだったので」。

 キャッチボールやブルペン投球のフォームを録画。スローモーションでコマ送りにして、好調時と不調時のフォームを重ね合わせてチェックした。「セットとワインドアップとで上体の動きが違っていたり、変化球の時は肩の開きが早かったり…。いろいろ気づくことができました」。あの手この手で修正を続けた結果、6回無失点という結果がついてきた。

 本拠地のある広島市は土砂災害に見舞われ、多数の犠牲者が出ている。大瀬良の父禎弘(よしひろ)さんは自衛官。「そういう災害があった時は救助活動に行っていたみたいです。雲仙普賢岳の噴火の時とか。まだ自分が小さいころだったので、後から聞かされました。命を落とすかもしれない場所にも行っていたみたいです」。テレビニュースを見て、人一倍胸を痛める日々が続く。

 「今、僕ができることは野球を頑張ること」。そう心に誓った。シーズン終盤、最後まで120%の力を出し切り続ける。