球界最年長の中日山本昌投手(49)が1日「記録よりチームの勝利」と悲壮な決意を明かした。注目の今季初先発は5日からの阪神3連戦(ナゴヤドーム)が濃厚。1軍登板すれば史上最年長出場となり、勝てば史上最年長勝利も更新する。だが、6連敗中で5位に沈むチームを案じるベテラン左腕は「記録は関係ない」ときっぱり。個を捨て再浮上を導く意気込みだ。

 早くも漂う祝賀ムードを一掃したのは、山本昌本人だった。1軍登板した時点で浜崎真二(阪急)の48歳10カ月を更新し、史上最年長出場となる。勝てば浜崎が48歳4カ月で持つ史上最年長勝利も更新する。もっと言えば、最年長奪三振、最年長安打などなど、49歳のパフォーマンスすべてが新記録になる。だがナゴヤドームで全体練習に参加した左腕は、きっぱり言った。「記録は関係ない。チーム状況の方が大事ですから」。鬼気迫る表情だった。

 8月にリーグ月間ワーストタイの20敗(7勝)を喫したチームは、6連敗中と底なし沼にハマっている。借金11の5位に沈み、3位阪神とは9差でCS進出は絶望のふち。振り向けば最下位ヤクルトとも2差しかない。かつての常勝軍団とはかけ離れた低迷に、生けるレジェンドも心を痛めていた。周辺は新伝説誕生を心待ちにしているが今、必要なのは目先の1勝。明かしたのは自身に勝ちがつかなくても、チームが勝てばうれしいという心境だった。

 もちろん先発勝利のベストシナリオを実現すれば、再浮上へこれ以上ない景気づけになる。託された意義は、本人が一番分かっていた。「このままじゃダメだと思うので、僕も何とか頑張りたい」。救世主となるべく、この日はドームで入念な走り込みを行い、汗びっしょりになった。注目の今季初先発は、5日からナゴヤドームで戦う阪神との3連戦。早ければ、初戦を任される可能性も十分ある。

 「まだ投げる日は聞いてないのでわからない。でもどこでもいけるようにしっかり調整します」。期待を裏切れば、チームの下降にさらなる拍車がかかってしまう。浮沈がかかる大事なマウンドを思い、いつになく緊迫感を漂わせた。

 「遅かったけど、(1軍に)合流できたのはよかった。東京には行かずに、しっかり名古屋で調整します」。今日2日からの神宮遠征(対ヤクルト)は外れ、ナゴヤ球場で調整する。万全の態勢をつくってさあ虎狩りへ。新伝説達成の注釈に、「救世主見参」の称号をつけたい。【松井清員】