<日本ハム4-7楽天>◇2日◇札幌ドーム

 日本ハム稲葉篤紀内野手(42)が2日、今季限りでの現役引退を表明した。楽天戦開始前の札幌ドームで会見に臨み、20年目の今季で野球人生に終止符を打つことを明かした。体力的な衰えが、一線を退く決め手になったと説明。今後は指導者を目指し、再スタートを切る。決断に悔いは「まったくないです」と断言。爽やかにケジメをつけ、有終の美を飾るための最終章へと向かう。

 すがすがしく、穏やかな笑みをたたえながら告げた。この日、正午からの記者会見。稲葉の声は澄み、よどみなかった。「私、稲葉篤紀は今シーズン限りをもちまして、現役を引退する決意をいたしました」。プレースタイル同様に潔く、散り際を決めた。「(悔いは)まったく、ないです。やりきったとはまだ言いませんけど僕、まったく悔いはないです」。プロ20年目、終戦を宣言した。

 人間性そのままに1本の筋を通し、信念を貫いた。8月31日、東京ドームのロッテ戦前。監督、コーチ陣に「伝えてもいいですか」と断りを入れてから、選手と裏方らスタッフを集めた。愛する仲間たちへ、真っ先にサヨナラを言いたい-。引退することを自らの口から明かした。約1分間のスピーチ。決断へと至った思いの丈を、淡々と説明した。「1日でも長く野球をやろう」と締めた。

 覚悟は2月、春季キャンプ中に固めた。栗山監督と家族ら一部に意向を伝えた。昨季からの葛藤を打ち破れず、心は傾いた。「体力的にも、いつもやってきたことが付いていけなくなったとか、そういうことが重なった。自分の打撃ができなくなってきた」。開幕直後の4月に、当時は慢性的だった左膝痛を解消するため、内視鏡手術をした。リハビリを経て復帰したが、屈伸もできないほど現状も満身創痍(そうい)が続く。決意は揺らがなかった。

 おぼろげな第2の野球人生の青写真も明かした。「指導者という道も気持ちはあります」。明確な今後は未定だが、球界に携わる形になりそうだ。両親への感謝の思いを口にすると涙がたまった。3点を追う9回1死無走者。代打で出場し中飛に倒れた。通常なら得点圏のチャンスで行う、惜別の「稲葉ジャンプ」がファンから自然発生。スタンドも、心も揺れた。「こみ上げるものがありますよね。最後の最後まで戦力でいたい」。長く、太い野球人生。残り26試合、そしてポストシーズンへと続けたい。モットーの全力疾走で、完走する。【高山通史】