<巨人4-2広島>◇3日◇上毛敷島

 巨人長野久義外野手(29)が千里眼の1発でマジック初点灯に大きく前進させた。広島前田に対して1点を追う5回、代打井端の2点適時打で逆転した直後に、落胆した相手エースを一振りで沈める11号2ランを放った。負傷している右ひざは万全ではないが、抜群の戦況眼を生かして首位攻防戦第2ラウンドの連勝に導き、3ゲーム差に広げた。今日4日の一戦に勝ち、DeNAが敗れればマジック22が点灯する。

 相手エースが見せた一瞬の落胆を、長野が見逃すはずはなかった。5回。代打井端が放ったボテボテの逆転2点適時打にマエケンの張り詰めていた空気が緩んだ。1死一塁から直後の2球目。内角への146キロのツーシームに対し、左足を思い切り三塁側に踏み込む。手負いの右ひざへの負担を最小限に減らし、長打を狙うかのように体を開いてアッパー気味に強振した一打は、走る必要もない会心の一撃だった。「無我夢中で打った。感触とかは覚えていない。出来すぎです」。対照的に、残したコメントに一分の隙もなかった。

 肉体は傷ついている。8月21日のヤクルト戦でサヨナラ負けを阻止する超美技の代償として右ひざ関節挫傷を負った。2日の首位攻防第1戦から先発復帰したが、試合前のティー打撃では一振りするたびにひざを曲げて気にする姿もあった。その状態でも、ずばぬけた技術を発揮できるのは、超越した千里眼があるからだ。

 交流戦中に西武の球団関係者が歩道を歩いていると、車から「お疲れさまで~す!」と窓を開けて叫ぶ男がいた。長野だった。イベントなどで数回、面識がある程度。抜群の視野で見つけ、あいさつも欠かさなかった。試合でもセンターの守備中にファウルボールが記者席に飛び込んで捕ったのを見ると「ナイスキャッチでしたね」と声をかける。約150メートル先の、ささいな出来事も逃さない。

 仲間への気遣いも四六時中、忘れない。ヤクルト戦で負傷交代の際に、マウンドで心配そうに見つめる山口に「大丈夫!」とばかりに大きくうなずき、OKサインを送った。いかなる状況でも、周囲を見渡す。

 日常の観察力と思いやりが、戦いの場では千里眼に変わる。優勝への分岐点となる戦いも、見極めている。前日も猛打賞。首位攻防戦で復帰しての働きは目を見張るものがある。原監督は「長野が見応えあるホームランを打った。思い切りよく打った」と、たたえた。「大事な試合で大事な場面でいい投手から打てて良かった」と振り返る長野も「まだフルで出ていないので、フルで出るようになってから聞いて下さい」と1歩下がった。長野のタネも仕掛けもない力で、今日にも3連覇へのマジックがともる。【広重竜太郎】

 ▼巨人が5回に4点を挙げて逆転勝ち。球宴後、巨人の1イニング4点以上は8月15日広島戦の3回に次いで2度目だが、前回も前田を攻略したもの。前田から2試合連続で4点以上取ったチームは、11年巨人が5月15日に4点、7月8日に4点を記録して以来、3年ぶりだ。これで2位とは8月2日(2位阪神)以来の3ゲーム差に広がり、巨人は今日にも優勝マジック22が点灯する。M点灯の条件は巨人が広島戦に●、DeNAが阪神戦に○。