<巨人1-0広島>◇4日◇宇都宮

 巨人沢村拓一投手(26)が地元栃木での凱旋(がいせん)登板で快投を演じ、優勝マジック22を初点灯させた。広島のサイクル男ロサリオを3打席連続三振でねじ伏せるなど、7回5安打無失点で3勝目。1ゲーム差に迫られていた首位攻防3連戦で広島を3タテし、返り討ちにした。勝負の9月に攻守に一体となった盟主が3連覇へ突き進む。

 主砲をねじ伏せたその時、マジック点灯への鐘が鳴った。5回2死満塁、打席にはロサリオ。巨人沢村は速球で追い込み、内角低めに沈むフォークで空を切らせた。勇ましく、右拳でガッツポーズ。反撃ムードを消した。「乗せたくなかった。次も対戦があるので」。今カード初戦でサイクル安打達成の主砲を3打席連続三振。「沢村の14球」が、赤ヘルを沈黙させた。

 涙だけが染み渡った球場だった。06年7月26日の栃木大会決勝、控え投手の背番号「9」はチームの敗戦をベンチで見届けた。ケガにも泣き、最後の夏出場は初戦のわずか1試合。「5番右翼」でマウンドに立てなかった。「思い出のある球場ですが、悔しかった記憶しかないです。だから…。今度は勝ちたいです」。つらかった記憶は充実の汗と一緒に、勝利の記憶へと塗り替えた。

 スタンドを見上げれば、祈りながら、声援を送る大好きな祖母と母の姿が映った。友人や地元の応援団もまた、必死の応援。ピンチが訪れる度、声が沢村を支えた。故郷の温かさを感じながら、前回登板の阪神戦での完封に続き、7回無失点の快投。「温かい声援をいただいて、ありがたかった」。息詰まる投手戦を制して、今季初のマジック「22」を点灯させた。

 胸に刻んだのは、「反骨」の精神だった。2軍での調整中、導かれるようにはまったのが、昨年大ヒットしたドラマ「半沢直樹」だった。銀行マンの主人公が、周囲の圧力や数々の苦難にも屈せず、はい上がるストーリー。キャンプ中に右肩を痛め、胃腸炎、不調などの苦悩をはね返そうとする自分と重なった。

 沢村

 悔しい思いはあります。でも、まだ挽回するチャンスはあります。「やられたらやり返す、倍返し」ですよね。

 昨年の流行語大賞に選ばれたフレーズのように、リーグ3連覇がかかる勝負の終盤に、完全復活を遂げた。原監督から「粘りながら、よく投げた。ナイスピッチング」と評価されたが、安堵(あんど)する様子は少しもなかった。「1年間戦えてないわけですから。チームがきつい時に勝てるように頑張りたいです」。“恩返し”するその時が、剛腕に訪れた。【久保賢吾】

 ▼巨人○、DeNA●の結果、2位以下の5チームに自力Vがなくなり、巨人に優勝マジック22が点灯した。対象チームは残り全勝した場合に最も勝率が高くなる広島(6割1分3厘)で、巨人は残り広島戦4試合に敗れても、他カードで22勝すれば88勝55敗1分け、勝率6割1分5厘となり、広島を上回る。巨人は07~09年に3連覇したが、最初のM点灯は07年が中日(巨人は9月28日)で08年は阪神(巨人は10月8日)。セ・リーグで3年続けて最初にM点灯は65~72年巨人以来になる。なお、現日程での最短Vは17日。

 ▼巨人の1-0勝利は5月31日オリックス戦に次いで今季2度目だが、この日は長野の二ゴロで1点。巨人にとって、決勝点が内野ゴロの1-0勝利は72年5月9日ヤクルト戦以来、42年ぶり。