<ヤクルト2-5巨人>◇6日◇神宮

 この物語は、あるチームのピンチに戦いを挑んだ熱血選手たちの記録である。今年、巨人にFAで転校してきた大竹の敗戦危機に、粘りの攻撃から健全な精神を培い、わずか1イニングで全5得点を挙げヤクルト戦逆転勝ちを成し遂げた。その奇跡を通じて、原動力となった信頼と愛を余すところなく記事化したものである。

 仲間がつないでくれた。2ストライクに追い込まれるも村田、片岡が連打で食らいつき、小林が四球を選び、代打井端がしぶとく中前へ。やっと刻んだ1点。絆を大事にする長野久義外野手(29)が何も感じないはずはない。「1死満塁で1点入っているのと、2死満塁で1点も入っていないのとでは全然、プレッシャーが違う」。解放された心で打席に立った。

 好投していた石山の吸い込まれるように真ん中に投じた141キロ直球を打ち砕いた。昨年5月4日広島戦以来の12号満塁弾。隣接する聖地、秩父宮ラグビー場にまで大歓声が届く“逆転トライ”だった。「井端さんのおかげで楽に打てた」。首位攻防の3日広島戦も代打井端の逆転適時打から11号を連続トライ。「井端さんに『またこのパターンだな』と言われた」。スタンドオフ(SO)井端からウイング(WTB)長野の必勝パスワークを確立した。

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 All

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 One(1人はみんなのために、みんなは1人のために)」。巨人にも、この魂が宿る男たちがそろう。井端はかつて試合前は名ドラマ「スクール☆ウォーズ」をロッカー室で見ていた。「あの熱さがいいんだよ。何か気持ちが高ぶるんだ。やってやるぞ、ってね」。クールなベテランも若き日は、魂を高揚させ、グラウンドへ飛び出していっていた。

 ドラマの主役、川浜高校ラグビー部滝沢監督の「お前はこの命…このボール…追わないのか!」を体現するように、右膝痛を負う長野は全力プレーをささげた。6回は坂本の安打で三塁に激走し、阿部の浅い左飛で本塁に勇ましく突っ込んだ。アウトになったが「出るからには走らないと」と強い決意で疾走した。

 チームトップタイの9勝を挙げている大竹も4回途中降板と苦しんだが、みんなで救った。原監督は7回の攻撃を振り返った。「あの回は、なんといっても井端。追い込まれてからよくタイムリーでつないだ。集中があった。チョーさん(長野)は一振りでね。見事としか言いようがないね」。曲がったことが嫌いで、熱血のあまり選手に厳しく指導し、時に涙する姿が滝沢監督と重なる。3連覇を果たした時、男たちの執念に「泣き虫先生」原監督は、涙を流すだろう。【広重竜太郎】

 ◆スクール☆ウォーズ

 1984年(昭59)から85年にかけ、TBS系で放送された学園ドラマ。京都・伏見工ラグビー部と、監督の山口良治を題材としたノンフィクション「落ちこぼれ軍団の奇跡」がモデル。高校ラグビー界で全く無名の弱小チームが、山下真司演じる教師の滝沢賢治が赴任してから全国制覇を成し遂げるまでの軌跡を描いた傑作。荒廃した高校生たちを更生させようと奮闘する涙もろい熱血教師で、ドラマのサブタイトルは「泣き虫先生の7年戦争」。