<ソフトバンク3-2ロッテ>◇13日◇ヤフオクドーム

 ソフトバンクが首位固めだ。今季最後の9連戦の初戦で秋山幸二監督(52)は6回途中からの早めの継投策を断行。これが奏功し、1点差逃げ切り勝ちだ。持ち場の8回を抑えた五十嵐亮太投手(35)は球団新記録となる43ホールドポイント(HP)をマーク。2位オリックスとは今季最大タイの4・5ゲーム差に広げ、明日15日にも優勝マジックが点灯する。

 秋山監督は先にマウンドに向かった郭泰源投手コーチからひと呼吸置いて、ベンチを出た。球審に投手交代を告げる。1点リードの6回。1死二塁でまだ85球だった先発中田からスイッチした。2番手岩崎は期待に応え、今江、クルーズを冷静に打ち取った。この試合の焦点の1つだった。

 「中田も粘りのピッチングをしていたが、勝負どころかなと。1点勝負になりそうだった。勝てる試合は勝っていかないといけない。その積み重ねだ」

 こうなれば勝利の方程式だ。7回から森、五十嵐、サファテとつないで逃げ切った。今季最後の9連戦。投手をなるべく温存したい初戦で、惜しみなくつぎ込んだ。ロッテにはヤフオクドームで今季8戦全勝。松田と李大浩の2発による3得点を、12球団トップの防御率を誇るブルペン陣が守り抜いた。これで1点差試合は26勝16敗。17勝26敗だったと昨年を振り返ると、ブルペンの貢献度も多大と言える。

 「8回の男」五十嵐は1死二塁のピンチも、初対戦のデスパイネをカーブで遊ゴロ。続く角中を追い込むと、超高速クイックを作動した。投球動作開始から捕手到達まで1秒1を切れば優秀とされるが、この1球は驚異の0秒8。タイミングを完全に外し、ボテボテの投ゴロ。「ボール球に手を出してくれたのは良かった」と納得顔だ。

 このクイックは偶然の産物と言えるかもしれない。7月5月楽天戦。無死満塁でボウカーと対戦し、追い込まれていた。「何を投げてもファウルを打たれて。それでやってみたら3つアウトを取れた」。脳裏にあったのは米マイナー時代、ヤンキース3Aで同僚だった福留孝介の言葉だった。「クイックからの真っすぐは手が出ないよ」。土壇場でのひらめきが武器に変化して以来、セットアッパーの輝きはさらに増した。

 HPは10年摂津とファルケンボーグを上回り球団新記録の43まで到達した。最優秀中継ぎ投手のタイトルはおろかリーグ制覇ならMVPの声まで聞こえてきそうだ。

 「41?

 42?

 43でしたか。何でも通過点って言っちゃうけど、やっぱり通過点ですよ。積み重ねです」。ベテランの豊富な経験値が、緊張感たっぷりの優勝争いの中では頼もしい限りだ。【大池和幸】

 ▼五十嵐が今季43ホールドポイント(HP)を挙げ、10年摂津正、ファルケンボーグの各42HPを抜いて球団シーズン最多となった。パ・リーグ最多は12年増井浩俊(日本ハム)50HP、プロ野球最多は10年浅尾拓也(中日)の59HP。