<広島1-7巨人>◇16日◇マツダスタジアム

 巨人村田修一内野手(33)が殻を打ち破った。6回2死二、三塁。1打席目の遊ゴロの反省を胸に刻んで向かう。「当てるだけのバッティングだった。ここまで来たら自分らしく、どんどん振っていく」。広島左腕戸田の内角へのスライダーに詰まる。だが当てにはいかない。振り切った。その分、勝利を呼び込む打球が中前へ落ちた。

 あのころの自分も、小さくまとまっていなかった。前日15日の試合前練習。ノックを受けていると、懐かしい昭和歌謡が耳に入ってきた。灰田勝彦の「野球小僧」だった。「懐かしいな~」。横浜(現DeNA)時代、多村、相川(現ヤクルト)ら先輩をはじめ、みんなが野球をプレーする喜びを歌った名曲の歌詞にほれ込み、聞き入っていた。

 「野球小僧がなぜくさる

 泣くな野球の神様も

 たまにゃ三振、エラーもする

 ゲーム捨てるな頑張ろう♪」

 失敗も多く重ねた若かりしころ。何度も励まされた青春の歌だった。「ついつい、口ずさんじゃった。頑張らないとね」と当時を知る関係者に健闘を誓った。

 8月8日の中日戦以来となる今季7度目の決勝打。昨季、チーム最多16度の決勝打を誇った主軸に勝負強さが戻った。原監督も「みんな便秘気味の人もスカッとしたでしょう。失礼!」と爽快な表情。村田は、もう下を向かない。「今季は悩んだけど結局、自分らしくやらないとね。残り少ないけど、ここからです」。野球は苦楽をともにするものだ。「あれ?

 今日は野球小僧、流れなかったね。だから効果は関係ないでしょ!」。今季も大好きな野球を1日でも長く、楽しむ。【広重竜太郎】