<DeNA0-6中日>◇16日◇横浜

 中日4年目の武藤祐太投手(25)が、プロ初先発で白星をつかんだ。ローテの谷間で抜てきされ、5回を3安打無失点。4イニングで先頭打者の出塁を許したが、粘りの投球でしのいだ。チームはこの日、3年連続のV逸が決定した。だが受けた谷繁元信兼任監督(43)も来季の先発候補に指名する好投。出直しで優勝奪回に向けて動き出す竜に、希望をともした。

 快挙を成し遂げた割には、ぎこちなかった。プロ初先発初勝利のヒーローインタビュー。武藤はぼくとつな青年ぶりが丸出しだった。「初めてなんでよく分からないですけど、うれしいですね。監督のミットを目がけて投げただけなので、何がいいか分かってないです。ヤバかったです。メッチャ長かった。(中継ぎとは)全然違いました」。ローテの谷間で抜てきされ、5回を3安打無失点。3連敗を阻止したのは、4年目右腕だった。

 「昨日の晩は緊張で全然眠れなかった。今朝起きた時も、生きた心地がしませんでした」。極度のあがり症。なかなか緊張はほぐれず、5イニング中4度、先頭を出したが、周囲に支えられた。荒木と森野が入れ代わり立ち代わり「もっと自信持って投げろ!」。受けた谷繁兼任監督は「低く、低くだぞ!」。そのたびに奮い立った。足がつって5回で交代するまで、147キロの速球に変化球を織り交ぜ、0を並べた。

 最愛の人からの熱い声援も力になった。昨年11月に結婚した夫人(23)が、この日朝の新幹線で名古屋から駆けつけた。宿舎で手渡してくれたのは、ユニホームの形をした手作りのお守りだった。先発転向を期待された今季は、右肩痛もあって中継ぎにUターン。それもまだ登板11試合で力を発揮できずにいたが、祈る思いでスタンドから声援を送る夫人を思うと力が入った。「家族のためにも頑張らないといけない」。最後を締めた鈴木翔から「おめでとうございます」ともらったウイニングボールはもちろんお守りへのお返し。新婚1勝の大事な宝物だ。

 谷繁兼任監督は「要所を抑えたし、先発として投げられることがわかった」と来季先発候補の1人に加えた。吉見、浜田、朝倉らの故障やカブレラの不調で先発陣は火の車。そんな中、70球の力投が希望をともした。「これからも任されたところでチームのために投げたい」。来季は先発にも再挑戦。お守りの入ったバッグを担ぎ、ブレークを誓った。【松井清員】

 ◆武藤祐太(むとう・ゆうた)1989年(平元)6月14日、埼玉県生まれ。飯能南高では1年春からエースも甲子園出場はなし。社会人のホンダでは2年目の09年日本選手権で優秀選手に選ばれた。148キロの直球を武器に入団1年目から中継ぎとして4年目の今季まで110試合に登板。16日DeNA戦がプロ初先発だった。178センチ、85キロ。右投げ右打ち。推定年俸2400万円。

 ▼中日の今季優勝の可能性が完全に消滅した。中日が残り10試合に全勝した場合、71勝69敗4分け、勝率5割7厘。巨人が残り15試合を全敗すると73勝70敗1分け、勝率5割1分となり、中日が巨人を上回ることができない。