<阪神9-3中日>◇19日◇甲子園

 藤浪晋太郎投手(20)が闘魂投球や!

 虎ファンの願いに応え、打球直撃にも負けず10勝だ。7回3失点。セ・リーグでは68年江夏(阪神)以来、4人目となる高卒で新人年から2年連続2ケタ勝利。甲子園の申し子が、自力2位復活の白星を呼び込んだ。広島に0・5ゲーム差。この勢いで今日20日、2位浮上に挑む。

 藤浪がほえた。6回だ。打球が左足の付け根に当たるアクシデントが発生した。ずっと見守ってきた母明美さんが「見たことがない」という登板中の治療でベンチ裏へ。待ち受けるのは2死満塁のピンチ。そんな苦境に、背番号19は戻ってきた。大島を鋭く沈む球で空振り三振に仕留めた。ガッツポーズとともに「っしゃー!」と叫んだ。

 藤浪

 イメージしていたボールが投げられたのでよかった。初回にいきなり四球で失点してしまった。野手に感謝したい。

 形は悪くとも、白星をもぎ取った。1回の先頭打者にいきなり四球。内野安打と失策で2点先制された。2回にも失点したが、3回以降立て直した。7回9安打3失点(自責1)。高卒新人年から2年連続2桁勝利となる10勝目だ。00年西武松坂以来、阪神では68年江夏以来の快挙。それは有言実行の2桁勝利だった。

 開幕前、母校・大阪桐蔭のグラウンドで藤浪が漏らした言葉がある。

 「今年は10勝できるかな…。去年みたいにうまくいかないと思うんですよね」

 西武森らに囲まれ、素に戻れる時間でこぼれた本音。研究され、イニングも伸びる。不安があった。しかし、すぐに言い直した。

 「後退するのは嫌。何とかなります。負けも減らしたい」

 それから藤浪は目標を「昨年以上」に定めた。期待を背負う宿命を受け入れ、有言実行へ歩み始めた。

 勝てる投手を目指し不安をかき消す作業の連続だった。休日は試合のビデオを繰り返しチェック。横振りになりがちな欠点を見つけたことで、この日も立て直すことができた。寮に帰れば体重が落ちないように、ご飯も大盛り食べた。栄養学も勉強。地道な努力を欠かさず、昨年と同じ10勝到達。それでも出てくるのは反省の言葉だらけだ。

 藤浪

 とりこぼしている試合が多いので。もっと勝てていたと思います。

 だが、10勝以上の目標は達成した。あとは繰り返し口にする「CSを突破して日本一」に向かうだけ。この日広島が敗れ、チームに自力2位の可能性を復活させた。何より2位広島に肉薄。昨年はCSで広島に敗れた。だが、この男なら、やってくれそうな気配が漂う。【池本泰尚】

 ▼藤浪が今季10勝目。高卒1年目から2年連続2桁勝利は、99年に入団した松坂(西武=3年連続)以来、14年ぶり。2リーグ制後は11人目となり、セ・リーグでは権藤(洋松)堀内(巨人)江夏(阪神)に次いで4人目だ。甲子園球場では今季5勝目で、通算10勝目。甲子園球場と他球場で通算勝敗を比較すると、

 甲子園

 10勝2敗

 勝率・833

 その他

 10勝12敗

 勝率・455

 他球場では負け越しの藤浪だが、甲子園球場の勝率は8割を超えている。