<楽天3-2日本ハム>◇20日◇コボスタ宮城

 指揮官も驚く活躍ぶりだ。楽天島内宏明外野手(24)が日本ハム戦でサヨナラ打を放った。2-2の9回1死一、三塁で、クロッタから放った打球は跳ねて一塁手の頭上を越えた。1回、7回にも安打を放ち、3安打の大当たり。明大の先輩でもある星野仙一監督(67)の目を見開かせた。チームは5連勝で、3位日本ハムとは6・5ゲーム差。逆転CSを諦めない。

 打球の行方よりも、一塁塁審の手を見ながら、島内は走った。2-2の9回1死一、三塁。日本ハム・クロッタから放った当たりは、跳ねて一塁中田の頭上を越えた。フェアか、ファウルか。塁審の手が、フェアゾーンへ伸びた。「チームの雰囲気がすごくいい。それに乗せられましたね」と声を弾ませた。飛び出してきた仲間たちに清涼飲料水をかけられ、もみくちゃにされた。

 当たりが止まらない。1回は先頭で三塁打。7回は中前打で、3安打を重ねた。6試合連続安打で、その間は27打数14安打、打率5割1分9厘と驚異的な数字をたたき出している。今季限りの辞任を表明している星野監督は「あいつ、俺がいなくなると思ったら、のびのびやってるな」。そう話す顔は、孫を自慢するようだった。

 明大の先輩、後輩という間柄。だが、星野監督は母校の後輩をドラフト指名するのは好まない。どう使っても「後輩だからだ」と、いらぬ誤解を招きかねないからだ。それでも3年前の秋、最下位の6位で指名に踏み切った。「リストを見たら島内が残っていた。足が速いと聞いたし、それなら『行け』と言ったんだ」。もし、あの時、監督のひと声がなければ、プロ入りはなかったかもしれない。

 昨季はレギュラーに定着しながら、9月に守備で左肩関節唇損傷の重傷。リーグ優勝、日本一の輪に加われなかった。復帰しても、打球が飛ばなくなっていた。星野監督は「せっかくレギュラーをつかんだのに」と寂しそうだった。それが、ようやく、以前に戻りつつある。島内は「(星野監督の辞任が)ウソであって欲しいですね」と言った。残り14試合。本来の姿を、少しでも多く監督の目に焼き付ける。【古川真弥】