<中日1-4巨人>◇24日◇ナゴヤドーム

 V3を目前に花を添える巨人史上最速レコードだ。山口鉄也投手(30)の在籍9年目での500試合登板、坂本勇人内野手(25)の25歳9カ月での1000試合出場は、球団80年の歴史で最も早かった。

 山口は最初、ボールガールが持ってきた花束に目もくれなかった。視線はライト方向の1点。7回。1点を失い、1死二、三塁で右翼手橋本の本塁好返球を起点とした併殺で何とか切り抜けた。橋本を待ち受け、感謝の思いでグラブを合わせる。やっと花束を受け取り、控えめに掲げた。「きっちり抑えられれば良かったけど到(橋本)に助けられた」と仲間に感謝した。

 坂本は初安打初打点の地、名古屋で節目に達した。山口とのダブルメモリアルを「仲良くしている先輩と同じ日に達成できたのは思い出になる」と喜んだ。

 世に名前が出始めたのは同じ08年。坂本は新鋭の遊撃手、山口は米国帰りの流浪のセットアッパーとして台頭した。球宴にともに初選出。初々しく一緒に行動した。山口が車で寮に坂本を迎えに行き、羽田空港へ向かった。坂本がふと、悩みを漏らした。

 「10代で、たまたまレギュラーになったけど正直嫌なんです。他にふさわしい人がいる」。5歳上の山口が優しく返した。「お前はオレにないものを持っている。オレは10代のころ活躍の舞台がなかった。(球宴に)お前がいて心強いよ」。坂本の顔がパッと晴れた。車の窓を開けた。青空へ、レゲエグループ湘南乃風の曲を2人で熱唱した。輝かしくも、甘酸っぱい球歴の始まりは一緒だった。

 才能を見いだした原監督も感慨深かった。「見事ですね。両君ともさらに前へ目標を置いて、追い込んでほしい」。山口は起用してくれた首脳陣、治療を尽くしてくれたトレーナーに感謝し、誓った。「自分たちで1つずつ勝って優勝したい」。前祝いを終え、歓喜へ向かう。【広重竜太郎】

 ▼通算500試合登板=山口(巨人)

 24日の中日23回戦(ナゴヤドーム)で7回からリリーフして達成。プロ野球93人目。初登板は07年4月29日のヤクルト5回戦(神宮)。プロ9年目での到達は、63年稲尾(西鉄)と63年秋山(大洋)の8年目に次いで、07年岩瀬(中日)と並ぶ3番目タイのスピード記録。巨人では角の11年目を抜く最速記録。

 ▼通算1000試合出場=坂本(巨人)

 24日の中日23回戦(ナゴヤドーム)に先発出場して達成。プロ野球466人目。初出場は07年7月12日の阪神12回戦(東京ドーム)。25歳9カ月での達成は豊田(西鉄=25歳5カ月)榎本(毎日=25歳6カ月)土井(近鉄=同)に次いで史上4番目の年少記録。巨人では王貞治の26歳3カ月を抜く最年少達成。