<ヤクルト12-3広島>◇24日◇神宮

 打撃の神様に並んだ!

 ヤクルト雄平外野手(30)が2点ビハインドの4回、逆転ののろしとなる20号ソロを右翼席に放った。1勝以上を挙げた選手で、シーズン20本塁打を記録したのは、打撃の神様といわれた巨人川上哲治(故人)ら4人しか成し遂げていない快挙だ。東北高から高校NO・1左腕と騒がれ18勝を挙げたが伸びず、09年オフから野手に転向。打者として迎えた5年目に大輪の花を咲かせた。

 高く上がった放物線が右翼席に舞い降りた。4回1死。カウント0-1からの2球目、野村が投じたチェンジアップをうまく捉えた。1点差に迫る逆転の呼び水となった。19号を放ってから実に18試合、72打席ぶりの1発。このフェンスを越えるのに時間がかかった。

 自分らしさを取り戻したのが、この打席の初球だった。スローカーブに対し、体勢を崩すほどの強振をしてファウル。このフルスイングが雄平の真骨頂だ。「力んじゃいけないけど振れないといけない。難しいけど、最近は振れていないように感じていた。だから練習で思い切って振るようにしてきた」と。成長をうながしたトス打撃の時から、強く振ることを意識して長所を伸ばしてきた。

 シーズン前に目標は立てなかった。「ホームランは10本打てればいいなとは思っていたけど。だって2軍で6本(12年)しか打っていないんですよ。10本だって僕には高い目標だった」と正直に言う。だから打撃の神様川上と同じ快挙を達成したと知ると「半端ないですよ。そんな偉大な人と比べられたら…」と恐縮するばかりだった。

 しかし才能を見抜いている人はいた。来季から監督に内定している真中打撃コーチだ。「まだ伸びしろはある。だって今は来た球を何でも打つ感じ。高めの直球だろうが低めのスライダーだろうが何でも振っちゃう。それで3割以上、ホームラン20本はすごい。考えて対処するようになったらもっと打つ」と。

 未完の大器といえるだろう。長所と課題が紙一重で共存している。実は考えすぎて開幕から4月までは2割2分4厘だった。「考えても考えなくても同じ」。シンプルに考えるようにした。何しろフルスイングが持ち味とわかっている。今はまだ貪欲に振り続けるだけだ。【矢後洋一】

 ◆雄平(ゆうへい)本名高井(たかい)雄平。1984年(昭59)6月25日、川崎市生まれ。東北(宮城)エースで2年春に甲子園。高校37本塁打、最速151キロ。02年ドラフト1位でヤクルト入団。1年目5勝も伸び悩み10年外野手に。174センチ83キロ。左投げ左打ち。今季推定年俸1250万円。家族は夫人と2女。

 ▼雄平がプロ12年目で初めて20本塁打。雄平は09年まで投手として通算144試合に登板し、18勝19敗1セーブを記録。プロで1勝を挙げ、シーズン20本塁打以上を放った選手は川上哲治(巨人)西沢道夫(中日)藤村富美男(阪神)森下重好(近鉄)に次いで史上5人目。ヤクルトでは初。