<阪神1-0DeNA>◇29日◇甲子園

 9回。そこまで0行進の阪神先発岩田から呉昇桓投手(32)はバトンを受け取った。登板数も62試合を数えた。頼れる守護神に甲子園の虎党の大歓声は、勝利への期待を表していた。

 「他の選手が頑張ってくれたので勝てたと思う。(2イニング目は)自分は考えていなかった。9回裏に1点入っていたら終わりだったので」

 DeNA打線の中軸を寄せ付けなかった。阪神の9回の攻撃は2死二塁で藤井が一塁ライナーに倒れた。その次は呉昇桓の打席だったが、西岡が準備していた。無得点で終わり呉昇桓はベンチから再びマウンドに向かった。今季6度目、勝負の9月に入って4度目の「イニングまたぎ」も何のその。直球だけではなく、変化球も織り交ぜ手玉に取った。「バッターのタイミングを外れられたと思う」。延長10回はわずか7球で3者凡退にし、サヨナラ劇につないだ。

 2回無安打無失点。3三振を奪い、パーフェクト投球を披露した。どんどん高まるボルテージ。ゴメスのサヨナラ犠飛で、今季2勝目を手にした。2イニング投げきったのは2度目。勝負を左右するマウンドに立ち続け勝利に導いた。

 母国の英雄も抜いた。前回登板の27日ヤクルト戦で97年宣銅烈(中日)の韓国人最多セーブ数の38に並んだ。この日はセーブこそつかなかったが、セーブ数と救援勝利数を足したセーブポイントで宣銅烈の39を抜いた。呉昇桓にとってサムスン時代の監督でもある恩師。「比べものにならない」と尊敬のまなざしを送るレジェンドの軌跡を力強くたどっている。

 残り2試合。最終戦10・1広島戦も含め落とすことのできない試合しかない。「みんなも勝つためにやっているので」。そしてCSの短期決戦へ。2イニングを完璧に抑える守護神がいるなら、悲願のCS突破もみえてくる。【宮崎えり子】