阪神久保田智之投手(33)が、今季限りで現役引退することが2日、分かった。05年優勝に守護神として貢献。07、08年は2年連続で最優秀中継ぎ投手賞に輝くなど、150キロを超える速球を武器に常勝阪神を支えた。近年は本来の力量を示せず、今年は1度も1軍に昇格していなかった。今日3日にも球団から発表され、引退会見に臨む。

 黄金期を築いた鉄腕が阪神を去る。かつて長年にわたって必勝リレーの一角で活躍してきた久保田が現役引退する。全盛期は150キロ超の重い直球や鋭いスライダーを武器に打者を圧倒したが、近年は球威不足で不振に陥っていた。プロ12年目の今季は2月に右肘を手術する苦しいスタート。1度も1軍に昇格せず、2軍戦でのプレーが続いた。

 阪神にとって、常勝時代の功労者だ。表情を崩さない、ふてぶてしいマウンドさばきが何よりの魅力だった。3年目の05年にはクローザーとして27セーブをマーク。岡田彰布監督(当時)のもとで同い年の藤川球児、助っ人左腕のウィリアムスと無敵の必勝リレーで敵を圧倒した。試合終盤を締めくくるトリオは「JFK」の異名を取って、プロ野球ファンを魅了した。07、08年には2年連続で最優秀中継ぎ投手賞に輝いた。とりわけ07年は大車輪の働きで驚異の90試合に登板しプロ野球新記録を樹立した。一方で故障に悩まされるようになった。先発に転向した09年は右肩痛を発症しシーズン1試合登板にとどまった。慢性的な右肘痛で、かつての球威は失われていった。

 同じポジションのセットアッパー右腕には若い有望株が育っており、33歳のベテランは来季の戦力構想からも外れていた。プロ2年目の金田が150キロ近い速球を生かして急成長。シーズン終盤では20歳の松田が必勝リレーに入り快速球で打者をねじ伏せる。若返りを図るメンバー構成のなかで力量を示せなかった。

 2月の右肘手術後、戦線に復帰してからはウエスタン・リーグ22試合に登板して1勝1敗、防御率6・23だった。「若い投手、先輩もいるし、負けないようにしたい。去年の終盤に、1軍で投げられて、まだまだやれる思いはある」と意気込み、今季での完全復活にかけていたが、かなわなかった。この日は鳴尾浜で2軍練習に参加。ブルペン投球も行った。「久しぶりにブルペンに入ろうかなと思って入りました。感触を確かめるというか…。明日、会見で話すので、それで分かります」と話した。腕をちぎるようにして力投してきたタフネスな剛腕が甲子園のマウンドから消える。

 ◆久保田智之(くぼた・ともゆき)1981年(昭56)1月30日、埼玉県生まれ。滑川(なめがわ)では3年夏に「4番捕手」で甲子園出場し、試合途中には投手も務め話題に。常磐大を経て02年ドラフト5巡目で阪神入団。1年目の03年に5勝、05年は27セーブを挙げ2度のリーグ制覇に貢献。06年の第1回WBC代表メンバー入り(登板はなし)。07年には90試合に登板し、プロで野球シーズン最多記録を樹立。07、08年に球宴出場と、セ・リーグを代表する救援投手となった。181センチ、95キロ。右投げ右打ち。