<日本ハム1-0楽天>◇5日◇札幌ドーム

 出た、162キロ!!

 日本ハム大谷翔平投手(20)が、今季最終戦で公式戦最速記録に並ぶ球速162キロをマークした。1回に3球、2回に1球と実に4球を投げ込んだ。7月のオールスター第2戦(甲子園)で記録していたものの公式戦では初。11日から始まるクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージを見据え、2回無失点で降板。稲葉の引退試合で快投を演じた。

 少しだけ、先輩から主役を奪った。体調不良から復帰し、14日ぶりのマウンドに上がった大谷が、162キロを4度もたたき出した。「真っすぐ主体でどれだけ押していけるかを課題にしていました。まずまずだったと思います」と手ごたえを口にした。

 稲葉の引退試合で満員となった4万1208人のスタンドをどよめかせた。栗山監督から直々に「CS開幕投手」に指名された。11日の初戦までは中5日。わずか26球で降板したが、派手に彩った。

 “前座”にしては、強烈すぎるインパクトを残した。1回、先頭・楽天銀次の膝元へ、スピンの利いた直球を投げ込んだ。首位打者争いをする「職人」のバットを粉砕(二ゴロ)。球速表示は、日本球界最速タイ、大谷自身は球宴以来となる162キロを示した。「(稲葉に)細かいことでもいろいろ気にかけていただいた。成長した部分を見せられたら…と、気合は入っていました」と全開だった。

 オールスターで162キロを初めて投げたとはいえ、はじき返されて失点した。「速くても、打たれたらしょうがない」(栗山監督)。この日は、違った。2回、先頭の西田を160キロ直球で空振り三振。全17球の直球のうち、12球が160キロを超えたが、前に飛んだのは2球のみ。「球宴とは全然違います。そんなに腕を振っている感覚がなかった」。そして圧巻は2回2死。藤田へのフォークが151キロを記録した。「(握りを)浅めにして投げてたので」。直球にてこずる打者をさらに幻惑した。

 先月26日ロッテ戦後、体に異変を感じた。のどの痛みと寒け。高熱だった。翌27、28日は寮で静養。投打2つの練習をこなし、疲れても、痛くても「大丈夫です」しか言わなかった大谷が、診察のために訪れた病院で「早く横になりたいです」と弱音を吐いた。登板予定は延期となり、野手出場も同戦が最後になった。だが1年間戦ってきた体に、力が戻った。

 2年目で初体験のCSへ不安は解消された。「短期決戦は1点勝負。後ろは気にせず、全力で抑えていきたい」。長いイニングは考えず、この日と同じように立ち上がりからフルパワーで真っ向勝負することを宣言した。【本間翼】

 ▼大谷が公式戦で初めて162キロを計測し打者3人(銀次、榎本、藤田)に合計4球投げた。08年6月1日クルーン(巨人)が1球マークした公式戦のプロ野球最速記録(スピードガンが普及した80年以降)に並んだ。大谷は今年7月19日のオールスター第2戦(甲子園)で162キロを2球記録も、公式戦では今年8月3日ソフトバンク戦(札幌ドーム)での161キロが最速だった。