<セCSファイナルステージ:巨人2-5阪神>◇第2戦◇16日◇東京ドーム

 虎の勢いが止まらない。阪神の選手会長、上本博紀内野手(28)の闘魂が勝利を呼び込んだ。3回に先制打を放っていた上本は、5回に沢村の剛球が頭部に直撃するハプニングに見舞われた。東京ドームが騒然とする中、治療を受けてプレーを続行。鳥谷、マートンが適時打で上本の気迫に応えた。巨人に連勝した阪神は、今日の第3戦に勝てば日本シリーズ進出に王手がかかる。

 衝撃的なシーンに球場が一瞬、静まり返った。5回無死一塁、送りバントを決められず、追い込まれた上本は打ちにいった。沢村の剛速球が真っすぐ顔面に向かってきた。必死で避けたが、白球はまともにヘルメットを直撃した。「カツーン!」。乾いた音とともにボールは大きく弾んだ。

 すぐさまベンチからトレーナー、首脳陣が駆けだした。退場を宣告され、ぼうぜんとする沢村、場内が騒然とする中で上本はうずくまったまま動けなかった。「少しボーッとした感じだったので、ゆっくり時間をかけて対応しました」。真っ先に駆け寄った権田トレーナーは呼びかけに反応したことにほっとした。そのままベンチ裏へ下がった。交代か-。だが、数分後、上本はグラウンドに出てきた。敵、味方を問わず、大拍手が沸き起こった。

 勝利への執念だった。初戦を制し、1勝1敗のタイとして迎えた第2戦。重要な先制点をたたき出したのが上本だった。3回1死一、二塁。沢村の速球をセンター右へはじき返した。ポストシーズン3連勝の勢いを加速させる選手会長の一打だった。

 「大丈夫です。大丈夫です」。試合後、状態を問う報道陣に繰り返した。ベース寄りぎりぎりに立ち、覆いかぶさるように構える。そんな打撃スタイルで、今季はゴメス、マートンに次ぐ6個の死球を受けた。6月22日、楽天戦でも頭部死球を受けた。その時もトレーナー陣に「大丈夫です」と繰り返し、グラウンドに戻ったという。

 この日も上本は気丈な言葉しか口にしなかった。首脳陣、トレーナーは、目の焦点は合っているか、記憶はあるかなど、客観的な検査をした上で出場の許可を出したという。6回、頭部死球直後の打席、上本はいつもと同じラインぎりぎりに立った。「脳振とう?

 多少です…。怖さはなかったです」。

 8回の守備から交代すると再び拍手が起こった。「チームが勝ってよかったです」。そう言い残すと、上本はトレーナーに付き添われ病院へ向かった。初のCS突破への執念。小柄な二塁手が生み出した熱気が、まだ球場に残っていた。【鈴木忠平】

 ▼阪神が連勝発進。04年以降のプレーオフ、CSのファイナルステージ(04~09年はセカンドステージ)で公式戦の下位チームが連勝発進したのは、05年ロッテと07、12年中日に次いで4度目。アドバンテージ制度がなかった時代の05年ロッテ(○○→●●○)と07年中日(○○→○)は日本シリーズに進出。12年中日は第3戦も勝利してステージ突破に王手をかけたが、第4戦から3連敗して敗退した。