<セCSファイナルステージ:巨人2-5阪神>◇第2戦◇16日◇東京ドーム
1年前、阪神岩田稔投手(30)は宮崎にいた。「オレ、去年はもう終わってたから」。CS登板など確約されていない。ファーストステージを勝ち抜いた場合の、それも、巡ってくるかわからない、ほんのわずかな可能性のために、フェニックスリーグに参加していた。チームの後半戦の戦いも「見ていない」。そんな言葉を残していた男は、大舞台で投げられる喜びをかみしめていた。
打者の手元で微妙に動く直球にツーシーム、フォークがさえる。7回6安打2失点。「今季最後かもしれない」と、1球に力を込めた。3回には自らの失策で1死満塁のピンチを背負うも、橋本を二併殺。「ミスしたら負け」と肝に銘じていたからこそ、不測の事態を気持ちで突破できた。立ち上がりを制し、乗っていった。
泥だらけのユニホームがまばゆい。3回四球で出塁後、上本の適時打で二塁から激走。スライディングで先制のホームを踏んだ。「ショートダッシュの成果が出ましたね。足、絡まらんでよかったです。足、遅いんで」。冗談で笑いを誘う余裕もあった。信頼を勝ち取り結果で応えた。ファーストステージは中継ぎ待機を任されるほど必要とされた。振り返る穏やかな表情は、1年前とは完全に別人だった。
8月20日中日戦以来、57日ぶりの白星が大舞台で出た。もう過去は振り返らない。あると信じている次の出番へ向け、汗をかいたままの岩田は前だけを見つめた。【池本泰尚】
▼岩田の勝利は、公式戦での8月20日中日戦(京セラドーム大阪)以来、57日ぶり。この間公式戦で6試合に先発。全試合で先発投手の責任イニング5回以上を投げ、防御率2・48と健闘(それ以前は2・57)。とりわけシーズン最後の登板2試合(9月23日、29日の各DeNA戦)では計16イニングで無失点と、抜群の安定感で公式戦を終えていた。また今季の巨人戦では5試合に登板し2勝1敗、防御率2・81と相性のよさも示していた。



