<パCSファイナルステージ:ソフトバンク4-1日本ハム>◇第6戦◇20日◇ヤフオクドーム

 ソフトバンクが3年ぶり15度目の日本シリーズ進出を決めた。アドバンテージを含めて3勝3敗で迎えた第6戦で日本ハムに勝利。パ・リーグ制覇に続き、クライマックスシリーズ(CS)も最終戦で突破した。今季限りでの辞任がファイナルステージ開幕前日に表面化した秋山幸二監督(52)は、雑音と戦いながらの突破となった。日本シリーズは25日に甲子園で開幕し、2位から勝ち上がった阪神と対戦する。

 最終戦も9回に1点を返され、楽には勝てない。今宮が最後の打球を処理し、秋山監督はこけた頬をフゥと膨らませ、息を吐いた。「レギュラーシーズンも144試合で、CSファイナルステージも第6戦で決まり、本当にきついシーズンだと思います」。胴上げでリーグ優勝より1回多い8回舞った。「何もかも報われた気持ちだった」。リーグ優勝では男泣きしたが、涙は少しだけだった。

 激動の1週間だった。CSファイナルステージが開幕する前日の14日に今季限りの辞任が表面化。フロントに説得されて「会見をしないとケジメがつかない」と渋々マイクの前に座った。「選手、コーチ、球団にいろんな雑音が入ることを不本意に思う」。第3戦の試合前には過熱報道を沈静化したいフロントから後任の工藤新監督を発表すると言われたが、さすがに「やめてほしい」と断った。フロントは「試合に集中させてあげたい」と口にしながら、現場の心中は忖度(そんたく)してもらえない。心を乱されながら6試合を乗り切った。

 9月末に1勝9敗と失速したころ、1カ月で体重は4キロ減った。だが「結果がすべての世界」と逃げず、現実と向き合った。西武での現役時代、森祗晶監督(当時)に「プロのエンターテインメントを見に行け」と言われ、劇団四季や女優藤山直美の舞台、クラシック音楽に触れた。「失敗は許されない。おれらはまだやり直しがきくけど、お客さんに魅せるという意味で刺激になった」。監督になってもドームから車で5分の大濠公園能楽堂で能を見た。一発勝負のプロだった。

 リーグ戦に続く今季2度目の「最終決戦」に、リスク覚悟で中4日で大隣を起用。3回は柳田の中堅への打球を巡り、審判団に約2分の抗議で食い下がった。9月末に罵声を浴びた客席から「頑張れ、頑張れ、秋山!」のコールに押され、“雑音付き”CSを突破。プロ監督の仕事だった。

 幼少時にYGマークの帽子をかぶり、憧れだった王貞治(現球団会長)と同じ背番号1をつけて現役を過ごした。1軍監督でも「1」を入れた81を選んだ。王貞治の後任という重荷を背に、6年を過ごした。ゴールは阪神との日本シリーズだ。優勝監督インタビューでは大きく声を張った。「打倒阪神で日本一目指して戦ってきます」。かつて人相学者に「勝負師のもの」と言われた眉にキュッと力が入った。【押谷謙爾】