<パCSファイナルステージ:ソフトバンク4-1日本ハム>◇第6戦◇20日◇ヤフオクドーム

 ソフトバンク歓喜の日のマウンドには、またも大隣憲司投手(29)がいた。リーグ優勝したレギュラーシーズン最終戦「10・2」に続き、CS最終戦「10・20」も7回6安打無失点。黄色靱帯(じんたい)骨化症を克服した左腕が、中4日で好投してチームを3年ぶりの日本シリーズに導いた。

 監督インタビュー中に、大隣は異例の“指名”を受けた。インタビュアーから大隣について聞かれた秋山監督が「呼びましょか?」と繰り返すと、ベンチから走って飛び入り参加。「ありがとうございます!

 僕自身も監督を日本一にしたいし、僕もなりたい。その気持ちで一生懸命投げました。良かったです。皆さんに支えられてここまで戻ってこれた。チームに迷惑をかけたので、7月末から精いっぱい投げようと思っていた」と、仕事をやり終えたという表情で振り返った。

 今季で退任する指揮官を胴上げしたい気持ちで、懸命に腕を振った。直球、変化球とも丁寧に投げた。122球を投じた第1戦から中4日。3、5回は無死から走者を許したが、ともに西川、中島の1、2番くせものコンビを片付けた。6回は無死二塁をしのいだ。誰もが称賛する99球。秋山監督からも「頭が下がります」と最高の褒め言葉をもらった。

 スタンドでは闘病を支えてくれた優子夫人が観戦。昨年6月の手術当日のこと。3時間の手術を終え、病室に戻ると夫人が待っていた。心配そうな顔を見て「看護婦さんが同じ出身やったよ」と話しかけた。「そうなんや…」。たわいもない会話が続いたが、内容は覚えていない。意識がもうろうとする中で、あえて明るい話題をしていたのだった。

 気さくで、周囲に気を使う性格。見舞いに来るチームメートにも、痛みをこらえて元気そうな顔をつくった。同時に、悔しさもこみ上げてきた。今年7月に復帰登板したが、手術、リハビリで1軍不在の期間はチームに迷惑をかけた気持ちが強い。だからこそ大一番を前に「働いてない分、しっかり頑張らないと」と誓った。空白の1年1カ月を埋められるチャンスだと意気に感じた。

 7回を終えてベンチに腰掛けると、珍しく歩み寄ってきた秋山監督から肩をたたかれ、ねぎらいの言葉をかけられた。救援陣に後を託し、3年ぶりの日本シリーズが決まると、最高の笑顔が輝いた。戦いは、阪神との日本シリーズへと道が延びた。大隣にとって大きな野球人生の転機となった今季。まだ輝ける舞台が待っている。【大池和幸】

 ▼ソフトバンクが11年以来、15度目の日本シリーズ出場を決めた。11年のファイナルSは4勝0敗だったが、今年は最終戦に勝って4勝3敗。04年以降のプレーオフ、CSでソフトバンクがファイナルSの「最終戦」まで戦うのは4度目だが、過去3度の結果は04年対西武○●●○→●05年対ロッテ●●○○→●10年対ロッテ□●○○●●→●

 3度続けて黒星でシリーズ進出を逃した最終戦にようやく勝利。今年は公式戦の最終戦でリーグ優勝を決め、CSでも最終戦の白星でシリーズ進出を決めた。