前を向いていこう!

 9年ぶりの日本シリーズで敗退した阪神は10月31日、今季の全日程を終えて関西へ戻った。和田豊監督(52)は一夜明け、悔しさを見せつつ収穫を強調。1年ごとの成長に手応えを感じながら、球団創設80周年となる来季の30年ぶりの日本一へ、敗北を糧にする。

 嵐の10月が終わった。前夜は苦い酒を飲んだ。戦いなき帰阪。スーツ姿の和田監督は、宿舎のソファに腰を静めた。悔しさが残る赤い目、柔らかな笑みを浮かべる表情には充実感も漂っていた。広島とのシーズン最終戦を制した1日から始まり、CSの快進撃そして日本シリーズ敗退。「悔しさは解消した」と聞かれた指揮官は「できてないよ~」と笑いながら続けた。

 和田監督

 時間がたつにつれて、より悔しさが増してくるけどね。それでも前を向かないといけないし、いい意味での目標というか、昨年の今、終わった時点よりも、チームはレベルの高い目標が持てるようになってきている。優勝とか順位だけでなく、細部にわたってもっとああしよう、こうしようというものがたくさん見えてきたね。

 初戦を勝った後、4連敗で終わった。競り合いをものにできなかった、ソフトバンクとの差。阪神は、勝負どころで致命的なミスが出てしまった。バント失敗や野選となる判断、対照的に敵には球際の強さや積極的な好走塁を見せつけられた。唇をかんだ夜、指揮官の頭を何度もめぐっていたのは、そつなきパ・リーグ王者の姿だった。

 和田監督

 出てみないと分からないことがたくさんある。選手も一緒だと思うよ。あの03年、05年を経験した選手がそんなにいなかったからね、今のチームは。これで若い選手、例えば梅野なんて1イニングマスクをかぶって、1つ盗塁刺して、すごい勉強になった。そこをどう感じて、どう生かしていくか。

 常勝軍団への1歩目にする。球界で2球団だけが味わうことができる頂上決戦は9年ぶりだった。緊迫感に包まれた中で集中し、1球1球が勝負を分ける雰囲気を味わえたことは、きっと未来へつながる。「間違いなく去年より成長している」。遠くて、でも近くにも感じられた日本一の頂。若虎と猛虎の財産として、これからの糧にする。【近間康隆】