早くも“大引効果”だ。ヤクルトは14日、松山秋季キャンプ中の坊っちゃんスタジアムで、四国IL選抜と練習試合を行い4-1で快勝した。真中満監督(43)の“初陣”を飾ったのは、日本ハムからFA移籍が有力視される大引と遊撃を争う西浦直亨内野手(23)と荒木貴裕内野手(27)だった。ともに3安打し、得点にからんだ。13日はとんぼ返りでFA交渉を行った真中監督も手ごたえ十分の白星スタートとなった。

 ヤクルト真中監督は試合後、満面に笑みをたたえた。「投手も野手も体を追い込んでいる中で、しんどい面もあったと思うがしっかり実戦に取り組んでくれた」と、試合形式導入の効果を感じ取っていた。その中で、前日にFA交渉したばかりの大引効果が表れたのは、偶然ではないだろう。

 3回は先頭西浦と荒木の連打でチャンスを作り、3点を先制した。1年目の西浦の姿勢が、特に目に留まった。「追い込まれても、何とか塁に出よう、右方向を狙おうという、しつこさを感じた。大引が入ってもライバルとして頑張らなきゃいけない選手。お互い刺激し合えば層も厚くなるし、そうなってくれると思う」。

 西浦にとって大引は法大の7年先輩に当たる。「ライバルなんて失礼です。今は自分のことで必死。一番下なんで、はい上がるしかない」と自分の立場を理解している。今季は3月28日に史上初の新人開幕戦初打席初球ホームランという離れ業で衝撃のデビューを飾った。ところが4月26日に2軍落ちすると2度と昇格することはなかった。ストレスで頬はこけた。「同じことは繰り返せない」と2年目にかけている。

 荒木も同じだ。遊撃が本職だが、この日は一塁と外野を守った。緊急時の捕手役まで買って出ている。「人のことより自分のことをやるだけ。今日も打席での状況に応じた打撃を心掛け、それができた」。遊撃の2人が3安打を放ったのは、真中ヤクルトの競争激化の号砲だ。【矢後洋一】