阪神が来春の1軍沖縄・宜野座キャンプに臨時コーチとして招聘(しょうへい)するOB江夏豊氏(66=野球評論家)が、2月1日から指導することが23日、内定した。本来2軍が仕事場で、昨年安芸キャンプ始動だった掛布雅之GM付育成&打撃コーディネーター(DC=59)も同日から宜野座で指導する方向で調整中。球団創設80周年Vを飾るべく、キャンプ初日にレジェンドがタッグを組むことになりそうだ。

 来年2月1日の宜野座村野球場。あの江夏氏がついに、虎の指導者として帰ってくる。76年1月の退団から実に39年ぶり。臨時コーチとしての初日が、キャンプインに決まった。中村GMは指導期間について「最初から2クール(7日くらい)まで」と説明した。

 節目の1日に沖縄で虎戦士の動きに熱視線を送るのは、江夏氏だけではない。2軍が仕事場の掛布DCも、同日から1軍指導することが濃厚になった。中村GMは「本来は安芸(2軍)スタートの方がいいんだけど調整しています。最初の2日くらいは来れるように」。江夏氏&掛布DCのレジェンドタッグが、初日によみがえることが濃厚になった。

 両雄が阪神でチームメートだったのは74、75年の2年間だ。当時の江夏氏は今なお日本記録の年間401奪三振や、2度の最多勝など不動のエースに君臨。かたや73年ドラフト6位で入団した掛布氏は2年目の75年に定位置を奪い、主砲へのシンデレラストーリーを歩み始めた時代だった。当時は7歳上の主力と新鋭の関係だが、共通の志は打倒巨人。王者に牙をむいて向かっていった姿は、今も猛虎の象徴になっている。

 江夏氏の阪神退団後、2人の双曲線が交わることはなかった。だが、来季は球団創設80周年の節目。川藤OB会長ら歴代OBも一丸となって全面支援を約束し、今回39年ぶりの“タッグ再結成”が実現しそうだ。キャンプインは「野球選手の正月」とも言われるが、両雄が並び立てば80周年の船出にうってつけ。その姿は、巨人の4連覇を阻止するシンボルにもなる。

 阪神歴代最強左腕の江夏氏には、強固な投手王国づくりが期待される。左腕育成は急務で、岩貞や岩崎、ドラフト1位横山ら若手への熱血指導に注目が集まる。また、阪神最多349本塁打を誇る掛布氏には、キャンプ1軍発進が濃厚な陽川、中谷ら若手大砲の育成が期待される。もちろん現主力も両雄から超一流の極意を学び、進化の肥やしにできる。江夏氏が投手陣をたくましくし、掛布DCが野手陣を鍛え上げる。レジェンド集結で、10年ぶりのリーグ優勝をアシストする。【松井清員】

 ◆74年=(4)位(57勝64敗9分け、4割7分1厘)前半戦は首位を走り、6月26日には2位に5.5差をつけた。ところが8月の長期ロード後半に6連敗を喫し、3位に転落。最後は優勝の中日に14ゲーム差をつけられ、Bクラスに沈んだ。江夏は12勝14敗と負け越し。掛布は高卒新人ながら83試合に出場、3本塁打。

 ◆75年=(3)位(68勝55敗7分け、5割5分3厘)前半戦を首位で折り返したものの、前年に続き後半に失速。広島、中日との三つどもえの優勝争いから後退した。江夏は2年連続で12勝に終わり、オフには南海へ移籍。一方の掛布は106試合に出場し初の2桁本塁打(11本)と、飛躍への足場を固めた。