一夜でガラリ一変だ。巨人宮崎春季キャンプ2日目の2日、ドラフト1位岡本和真内野手(18=智弁学園)が場外本塁打を放った。連日のフリー打撃では柵越えを6本。中堅越えアーチの後、4本目は推定飛距離130メートルのロングドライブだった。初日は初球を空振りし柵越えもなし。緊張が解け、地に足が着くとスラッガーの本領を発揮した。奈良の怪童が力強く歩を進める。

 初日と違ってひむかスタジアムの人影はまばらだった。岡本2日目のフリー打撃。47スイング目だった。「ドカン」と、木製バットでは異質な音が響いた。高々と上がって宮崎の太陽と重なった。本人は「インパクトだけ見ていたので打球は見ていませんでした」。周囲も見失った。左翼で守備をしていたアルバイトが、約15メートルのネットを越えるのを確認した。推定130メートルの場外アーチだった。空振りスタートの前日とは別人。「昨日より打球が上がって良かった」と、名刺代わりの6発を振り返った。

 一夜で何が変わったのか。足が地に着いていた。奈良の怪童も「緊張していた」。力みから下半身のバランスが崩れた。「かかと体重になって、体が開いていた。悪いときの癖が出てしまった」と反省した。前重心で黒土を踏んだ。

 下半身と対照的に、とにかく肩の力を抜いた。室内練習場での、最後の打撃メニュー。スイングと同時に「スーッ」と息を吐く音が聞こえた。上半身に余計な力が入っていない。だから下半身の大きなパワーが、素直にバットに伝わる。連続のティー打撃に歯を食いしばる選手がほとんどの中、顔色を変えずに通した。

 ベンチプレスの測定は60キロ。腕相撲は「後輩に勝負を挑まれても、すぐ負ける。どこに力を入れていいか分からない」と未勝利。スイングスピードは、プロの1軍クラスで時速140キロを超える選手が多い中、社会人野球選手の標準を下回る130キロ程度。飛距離と計測値のギャップが、巨人のドラ1にふさわしい技術を物語る。「僕はバッターなので」と、簡単でも奥が深い言葉が際立った。

 緊張のほどけた“能面”で6本放り込んだ。中堅越えの1発には球場がどよめいた。金の卵の船出を現認した緒方耕一氏(日刊スポーツ評論家)も「体の内側からしっかりバットが出ている。場外ホームランは、実際140キロのボールを打ち返したら、140メートルは飛んでいた」と驚いた。「まだマイナス点です。1日1日少しでも、何か吸収していって、変化を求めていきたい」と岡本。場外に消えた1本をスタートにする。ここから1日1日、でっかくなる。【細江純平】