巨人大田泰示外野手(24)が3日、“松井先生”に中堅バックスクリーン弾で成長の跡を示した。この日、OBの松井秀喜氏(40)が春季キャンプを訪問。昨年は臨時コーチを務めたが、今回は視察が主な目的。KIRISHIMAサンマリンスタジアム宮崎で行われたフリー打撃ではネット越しに、先生からの熱視線が送られ、豪快なアーチで指導の成果を発揮した。

 1年の成果を豪快な一振りに込めた。フリー打撃の18球目だった。大田がバットを真正面からぶつけた。強烈なインパクト音をスタンドに響かせ、122メートルの中堅バックスクリーンに放り込んだ。わずか数メートル先で時間を共有した松井先生に、打球音と放物線でメッセージを送った。「力が入って緊張したけど、自分のバッティングができた」と安堵(あんど)した。

 先生の教えを実践した1発だった。バットを握った瞬間、心の中で唱えた。「しっかりセンターに打ち返す」。昨春のキャンプで、松井臨時コーチからもらったアドバイスだった。右投手相手のひと回り目、中堅から逆方向を意識しながら、広角に打ち返し、ラスト1球で最高の答えを出した。「ずっと言われていたバックスクリーンに1本入って、うれしかったです」と素直に表現した。

 松井氏は心身での成長を感じ取った。大田によれば、松井氏から掛けられた言葉は「去年よりバッティングが良くなっている」だったようだが、報道陣の質問には「振りがスムーズで力強かった。去年見た時よりも、いいバッティングをしている」と評価。「表情は去年より落ち着いているように感じたし、試合の中で自信をつかんで、彼の中で変わった部分があるんじゃないですか」と話した。

 原監督は今季、大田を「4番候補」と明言した上で大きな期待をかける。松井氏の後継者として、背番号「55」を託され、昨年から「44」で心機一転のスタート。昨シーズン終盤に飛躍への1歩を踏み出した。試行錯誤の6年の経験から、大田は口元を引き締めて言った。「いい感じで振れているので、実戦でどういう結果が出るか」。今日4日も松井氏は視察する。「何か、質問できるように夜を過ごしたいです」と思いを巡らせた。【久保賢吾】