侍エースと二刀流怪物が、約800キロ離れたキャンプ地でバチバチ火花を散らしている。広島前田健太投手(26)が4日、日本ハム大谷翔平投手(20)に勝負を挑んだことを明かした。キャンプ中の本塁打数を競う仰天レース。前田が敗れた場合は、大谷へのご褒美として「焼き肉堪能プラン」を約束しているとあって、この日もロングティー打撃で30本以上の柵越えをぶっ放した。宮崎・日南市と沖縄・名護市で、熱いバトルがひそかに繰り広げられていた。

 ピンク色のマイマスコットバットを手に、前田は投手メニューが行われる東光寺球場に立った。手袋を装着し、気合十分。午後の投手練習で、2日連続のロングティーを敢行した。ティーの打球音とは思えない甲高い音を残し、次々とボールが両翼92メートルのスタンドに消えていく。約800キロ離れた先にいる“ライバル”の耳に届かせるかのように…。

 「今日は何本ですか?

 30本くらい行ったでしょ?

 昨日より多いはず!

 大谷は何本ですか?

 勝負してるんですよ!」

 ナント、戦っている相手は、沖縄・名護にいる日本ハム大谷だった。バトルの始まりは、ロングティー打撃を行った前日3日に自身のブログで「今年ホームラン打ちたい!笑」と書き込んだから。それを知った大谷から反応があった。前日、前田は11本を放り込んでおり、同じく大谷も2日にフリー打撃で11発だった。「昨日まで同じやったんで」と、前田の闘志に火が付いた。

 勝負はいつでも全力だ。ロングティーとフリー打撃で条件は違うが、先輩前田らしく、異例のアーチバトルに敗れた場合は、自身に罰則を科している。「僕が負けたら焼き肉をご褒美にすることにしてるので」。年上だから見返りはない。意地とプライドの焼き肉バトルだ。自己申告では前田が有利?

 かもしれないが、二刀流大谷との熱い対決になること間違いなしだ。

 ともに昨年11月に行われた日米野球で侍ジャパンのユニホームに袖を通した。第1戦では先発した前田が5回2安打に抑え、3番手大谷も1回無失点。日米野球では14年ぶりとなる完封リレーを完成させた。互いに認め合う2人の戦い。通算82勝59敗、52安打1本塁打のマエケンに対し、大谷は通算14勝4敗、103安打13本塁打。勝負の行方はまったく読めない。

 前田は今季の開幕投手がすでに内定。例年通り第1クールはブルペンに入らず、練習を続けている。この日もメニュー後、淡々と走り込んだ。「キャンプも体を作る期間。(オフから)継続してやっていきたい」。“本業”への意識も、もちろん高く、順調に調整しているだけに、この仰天バトルも負けるわけにはいかない!【池本泰尚】