“茶道ピッチャー”が大胆かつ繊細に攻める。ヤクルト児山祐斗投手(19)が6日、沖縄・浦添キャンプ第2クールの初日にブルペン入りした。左腕を上手から地面すれすれまで振り下ろすダイナミックな投法。時折、左手の指が黒土に付着する。独自に編み出したフォームで60球を投じた。「誰に教えられたわけではないですけど、よく(DeNAの)岡島秀樹さんに似ていると言われます」と照れた。

 大胆さとはかけ離れた異色の経歴を持つ。小学校6年間、通い続けた茶道。保育園の年長時、授業の一環で出会った。野球と水泳を掛け持ちする中、毎週月曜日、岡山の自宅近くの教室で「お茶」と見つめ合った。「先生からお茶は『静のスポーツ』と教えられました。心を落ち着かせることの難しさを学びました」と振り返る。母緑さん(41)は「お茶を始めてからは靴をそろえたり、野球道具も片付けることがしっかりした気がします」と効果を説明した。

 静のスポーツの経験が、マウンドさばきにも生きる。「ピンチの中でも心を静めて自分の投球をするだけです」。昨季イースタン・リーグでは6試合に登板。未勝利に終わったが、ブルペンを視察した真中監督は「豪快な投げっぷりがいい。実戦向き。早く(試合での登板が)見たい」と期待する。最速142キロの直球とカーブ、スライダー、チェンジアップが武器。「冷静に自分の投球をして1軍にいられるようにしたい」と初の1軍キャンプで存在感を示す。投球は豪快に、心は静かに。わび・さびの精神でチャンスをつかむ。【栗田尚樹】

 ◆児山祐斗(こやま・ゆうと)1995年(平7)9月1日、岡山県生まれ。総社東小1年から野球を始める。総社東中から関西(岡山)に進学。2年秋に神宮大会準優勝。3年春のセンバツでは初戦敗退。13年ドラフト5位でヤクルト入団。180センチ、85キロ。左投げ左打ち。