星野楽天が超高難度のドラフト戦略を敷く。本番は27日に迫ったが、1位指名選手をあえて絞り込まない。東洋大・藤岡貴裕投手(桐生一)に加え、明大・野村祐輔投手(広陵)もほぼ同格の筆頭候補。その一方で他球団の動静を精査し、両投手に高リスクの重複抽選が予想される場合は、1位、折り返しの2位と高校生投手を指名し、ダブル一本釣りする「ウルトラC」も選択肢にある。万難を排し金の卵を獲得する。

 重厚なグランドプリンスホテル新高輪のドラフト会場で、楽天はライバルにとって最も不気味な策士となる。指折り他球団の1位指名をシミュレーションした星野仙一監督(64)は「…駆け引きだな」と不敵に笑った。指名、抽選、交渉権獲得。ウエーバー順。ルールにのっとり英知を振り絞る。

 「●●が1位」と公言し、相手に手の内をさらす必要など、どこにもない。ごく自然にたどり着く、目玉投手への順当な評価は星野監督も同じ。「左を考慮すれば、藤岡の評価はトータルで上がるよな、そりゃ。野村は投球がうまい。1年目からローテで投げるだろう」だった。が、厳然たる優劣を設けてはいない。「藤岡は何球団だ…。1本かぶりか…。でも案外、野村に流れてもおかしくないわ…」。“オープンリーチ”をかけるほどお人よしでない。決断は11球団の1位を読み切ってから、本番直前の控室でいい。

 今ドラフトのトレンドも読み切る。藤岡&野村は抽選が予想される。高校生投手に本格派の好素材が多い。即戦力社会人が少ない。つまり、高校生投手の多くが「外れ1位」で消える。「外れの読みが大事」と監督は言った。1位、外れ1位とも抽選失敗すれば最悪のリズムになる。そこで浮上するのは高校生投手の1、2位単独指名プランだ。

 プロ志望届を提出した高校生投手の中に、ダイヤの原石は2人いる。監督は具体名を出さず「速い」をキーワードに挙げた。全体3番目、15番目。「東北楽天…」の先にどよめきが起こればそれは、ウルトラCの勝負手が発動されたことを意味している。