<WBC強化試合:日本代表候補0-7広島>◇17日◇サンマリン宮崎

 あるぞ、先発!

 WBC代表候補の能見篤史投手(33)が17日、強化試合・広島戦(サンマリン宮崎)に2番手で登板し、2回を3奪三振で無安打に封じ込めた。当初は先発の後に控える「第2先発」、中継ぎと見込まれていたが、山本監督は「(起用法は)これから」と、昇格の可能性を示唆。際立つ快投で先発候補の1人に名乗り出た。

 マウンド上の能見にだけ、スポットライトが当たっているようだ。1球1球、ちぎれんばかりに腕を振る。快速球かと思いきや、フォークにチェンジアップ、スライダー…。計34球中、22球が変化球。広島打線は明らかに戸惑っていた。

 能見

 真っすぐが入らないから切り替えてもらった。ボールが滑る感じで。高めに浮かないようにできたけど、真っすぐがワンバンするぐらいだったんで。

 WBC仕様で硬いマウンド、1球1球感触が違うというボールを実感しながら、結果を残した。2回を3奪三振1四球の無安打投球。田中や前田健、内海と比べ、出来の良さが際立った。

 能見

 強いて言えば(マウンドは)京セラ(ドーム大阪)に似ている。しっかり体が止まってしまう感じだった。

 硬い足場で直球が制球しづらいと見るや、変化球主体に変更。直球は最速142キロで3つの空振り三振はフォーク2つと、スライダーで奪った。台湾人主審のストライクゾーンにも対応。同じく台湾人一塁塁審のチェックもかいくぐり、4回2死一塁からは一塁走者丸をけん制死させた。

 当然、山本監督は絶賛。「非常に腕を振っていてタイミングを取りづらい。能見は収穫。(起用法は)これから」と昇格の可能性を示唆した。本大会で先発予定の田中は広島戦で2回3安打2失点、前田健は日本代表相手に2回2安打無失点ながら本調子とは言えない状態だ。能見は当初、先発の後に控える「第2先発」、中継ぎを期待されていたが、快投によって先発候補の1人に名乗り出た。

 侍ジャパン初登板での快投は、準備のたまものだ。代表候補に決定後、すぐさま自主トレのペースを例年より2、3週間早めた。阪神沖縄キャンプに参加した13日までで、肩をつくる投げ込みを完了した。変化球が大きく曲がり、「好きな曲がり方じゃない」と苦笑いしたWBC球にも対応し、この日は「しっかり変化してくれるイメージは今のところ、あります」と話した。

 合宿中のキャッチボールは牧田が相手。「ボールが強い。ズドンと来る」。下手投げから繰り出されるボールに衝撃、そして刺激を受け、さらに向上心は高まっている。「(投げる場所は)僕がどうこう言うのはない。しっかりとチームに貢献できれば、どこでも投げるつもりでいる」。随所に見せる適応力は国際舞台でも武器になる。確実に注目度は高まっている。【佐井陽介】