<WBC強化試合:日本0-1阪神>◇26日◇京セラドーム大阪

 WBC日本代表の内海哲也投手(30)が、先発が有力視される3月6日のキューバ戦(ヤフオクドーム)へ向け万全の調整を見せた。阪神戦に先発し、3回を1安打無失点。フォームのバランスも良く、キレ、制球ともに抜群で、首脳陣を安心させた。09年の第2回WBC後、原監督から「ニセ侍」と叱咤(しった)された男が、雑草魂を胸に、雪辱の舞台に挑む。

 内海は迷いなく、宝刀を抜いた。3回2死二塁、打者上本。カウント2ボール1ストライクからの4球目。外角低めにチェンジアップを落とした。完全にタイミングを崩し、平凡な二飛でピンチを脱出。小さく握りこぶしを握った。「しっかり調整してきたことを出せて良かった」。そこには、ボールに苦しみ、代表選考の重圧に押しつぶされそうだった姿はなかった。

 スピードはなくても、直球、変化球ともに、コーナーに集める。2回は福留を外角直球で見逃し三振。3回も伊藤隼を外角直球で空を切らせた。2年連続でリーグ最多勝に輝いた生命線。一本足でピタッと立ち、阿部のミットに狂いなくボールを収めるスタイルは健在だった。「どの球種も思い通り。このまま継続する」と自信を見せた。

 4年前の自分と闘う日々だった。代表に選出されたが、登板は2次ラウンドの韓国戦の1試合のみ。3回途中でのKOだった。「チームが優勝できて、心からうれしかった。でも…、僕はチームの役に立てなかった。だから、僕はこの大会に懸けてきた。侍での借りは、侍でしか返せないんです」。17日の広島戦で3ランを浴び、1度は落選を覚悟したが、この大会に懸ける思いは変わらなかった。

 キューバ戦に向けた、最終テストだった。ブラジル戦の田中、中国戦の前田健までは内定。先発をたぐり寄せるには、結果を残すしかなかった。前日25日は大阪市内のグラウンドを自腹で借りて単独調整。「(求めるのは)結果だけ」と何度も繰り返し、雑草魂を胸に刻んだ。リベンジの舞台を、自力で奪い取った。

 対外試合4試合目で日本代表の先発投手が無失点だったのは初めて。3回37球とテンポも良かった。本大会では球数制限があるだけに安定感のある“省エネ”投球ができたのは大きい。山本監督からは「コントロール、キレ、非常にいいピッチングだった」と絶賛された。合宿前に「自分には忘れ物があるんです。それを取りに、米国に行く」と誓いを立てた。キューバには社会人時代にめった打ちを食らった借りもある。全ての雪辱を、3月6日のマウンドで果たす。【久保賢吾】