力士の筋肉の躍動、肌のつや、したたる汗-。わずかに払われた蛇の目の砂も見逃してはくれない。そんな細部まで精細に表現されている「初場所」を、全国のとある場所で見ることができる。大相撲中継は今、8K(スーパーハイビジョン)試験放送を行っており、各地のNHK放送局で一般人も視聴ができる。

 16年リオ五輪でも行われた、現行フルハイビジョン(2K)の16倍の解像度を誇る8K。スポーツ中継でも試そうというNHKの考えで、昨年九州場所に始まった。両国国技館では8Kカメラが3台置かれ、4Kのハイスピードカメラ1台も土俵を追っている。3月の春場所まで試験は続く。

 8Kの特徴は超高精細な画像もさることながら、音声にもある。22・2チャンネルサラウンド。前後、左右に加えて上下の音も表現するため、NHKスポーツ番組部の松本進チーフ・プロデューサーは「後方の拍手や、斜め前の人の声援も聞こえる。場内の升席に座っているかのような臨場感があります」と説明する。

 一般家庭で見ることはまだ、残念ながらできない。ただ、放送局を訪れれば、まるで国技館にいるような錯覚を覚えるかもしれない。優勝争いが白熱する終盤。稀勢の里の地元茨城など、第2の国技館と化す放送局が出るやも。【今村健人】