元不良少年が「世界」への布石を打つ。東洋太平洋スーパーウエルター級王者大石豊(32=井岡弘樹)が12日、大阪市内のジムで初防衛戦(22日、エディオンアリーナ大阪第2)に向け、練習を公開し会見に臨んだ。

 同級9位ラーチャシー・シットサイトーン(31=タイ)と対戦する。「プレッシャーはかなりある。(タイトルをとった試合で)『まぐれ勝ち』の声もちらほら聞いた。今回負けたら、その通りになる。しっかり防衛したい」と意気込みを語った。

 すさまじい“経歴”だ。少年時代は筋金入りの不良。暴走行為、傷害、恐喝などあらゆる“ワル”を繰り返し、鑑別所に5回、少年院へ2回送られた。成人式も少年院で迎えたという。「自分の心の弱さ。悪友と遊ぶことが楽しく、そっちに流されやすかった」。23歳の時、ボクシングジムに入門したのも、目的はケンカのレベルアップ。しかし、次第に魅力にのめり込んでいったという。

 更正のきっかけは家族にもあった。25歳の時に結婚して、2人の娘を授かった。守るべきものができ、ボクシングに打ち込むことを決意した。「(それまでの仲間、生活から)抜け出るのは大変でした。たばこをやめることからがスタートでした」。地道に戦績を重ね昨年11月、ついにタイトルを手にした。

 IBF同級5位にランクされ、世界挑戦の夢もふくらむ。だが、紆余(うよ)曲折をへてきた32歳にあせりはない。「1回は世界タイトルに挑戦したい。でもまだまだ実力は足元にも及ばない。一戦一戦しっかり勝ってレベルを上げて、会長に認めてもらいたい」。その熱い思いを聞いた井岡会長は「新世界?」とボケた。

 ◆大石豊(おおいし・ゆたか) 1985年(昭60)3月9日生まれ、大阪市出身。大阪・日本橋中を卒業後は職を転々。23歳からボクシングを始め、昨年11月23日に東洋太平洋スーパーウェルター級王座を獲得。戦績は14勝(8KO)5敗。身長182センチの右ボクサーファイター。