<プロボクシング:WBA世界ライト級タイトルマッチ12回戦>◇19日◇東京・ディファ有明◇観衆1700人
WBA世界ライト級7位の小堀佑介(26=角海老宝石)が衝撃の逆転KOで世界王座の奪取に成功した。20勝中18KOを誇る同級王者ホセ・アルファロ(24=ニカラグア)に初回から打撃戦を挑み、2回にダウンを奪われたが、続く3回に左フックでダウンを奪い返し、さらに連打を浴びせて、同回2分8秒、TKO勝利を収めた。日本と東洋太平洋の前スーパーフェザー級王者の新王者は、世界でも層の厚い1階級上のライト級で王座奪取。日本人ではガッツ石松、畑山隆則に続いて3人目の快挙となった。小堀の戦績は23勝(12KO)2敗1分け。
会場が揺れた。3回1分すぎ、小堀が左フックで王者をぶっ倒した。アルファロが立ち上がると、野獣のように襲い掛かった。回転の速い連打で、ロープ際を逃げる獲物を追い回す。その迫力にレフェリーが試合を止めた。新王者がガッツポーズでリングを跳びはねた。「うれしい。相手も強かったが、気持ちで上回った」。興奮気味に言った。
ばくちが成功した。強打の王者が得意とする右ストレートに狙いを定めた。大振りで打ってくる瞬間に、左フックをカウンターで合わせる作戦。タイミングが一瞬でも狂えば、自分がリングに沈む。危険な賭けだったが、この試合に備え、徹底して練習してきた。「してやったりです。トレーナーとして最高の勝利」と、53歳とベテランの田中トレーナーが胸を張った。
ニックネームは「ネーチャーボーイ」(野性児)。天性のパンチ力に無類のタフネスを誇る。1度リングに上れば、野獣のように相手に襲いかかる。この日もその闘争本能が逆転勝利を呼び込んだ。2回に右ストレートを浴びてダウンしたが、立ち上がるとすぐに反撃。「自分は前に出るしかない。負けるのは嫌ですから」。試合後は「早く帰って寝たいです」と天然ボケぶりで会場を笑わせた。
06年1月に1階級下の日本スーパーフェザー級王座に就いた。防衛を重ねたが世界という次の目標が見えず、気持ちが切れかけた。だが、昨年2月に3階級制覇王者マルコ・アントニオ・バレラの米国キャンプに参加。世界トップレベルとのスパーリングで、回転の速い連打と前進力が世界に通用することが分かった。本当の意味で世界を意識するようになった。
「サボリのコボリ」も返上した。入門時に「こいつ、ぐーたらだが磨けば光る」と素質を見抜いた田中トレーナーの自宅の隣に、昨年6月に引っ越した。寝坊癖は直らなかったが、趣味という睡眠以外はボクシング漬けになった。後援者の尽力で急きょ決まった世界戦。WBC世界フェザー級王者リナレス(帝拳)とのスパーリングなどで過去最高の状態に仕上げていた。
ライト級は世界で最も層が厚く人気のある階級。日本人ではガッツ石松、畑山隆則に続く3人目の快挙は「無印」から一転、世界進出の足掛かりにもなる。先日、警察から職務質問を受けたが、この日の勝利で知名度が高まる。それでも、リングを下りた小堀は「あまり目立たず地味に生きていきます」。新たなキャラクターの王者が誕生した。【田口潤】

