<プロボクシング:WBA世界スーパーフライ級タイトルマッチ12回戦>◇9月30日◇大阪府立体育会館第2競技場
王者名城信男(27=六島)が、薄氷のドロー防衛でV2の壁を乗り越えた。挑戦者の同級1位ウーゴ・カサレス(31=メキシコ)を相手に12回判定までもつれ込み、ジャッジ3者3様の引き分けで自己最多2度目の防衛に成功。ポイントでリードされた終盤、伝家の宝刀の右ストレートを何度も浴びせて追い上げた。4月の妻智子さん(27)との挙式後初の試合。気迫でベルトを守り抜いた。
最後は完全に名城ペースだった。12回1分すぎにはカサレスをコーナーに追い込む。腰砕けでダウン寸前の挑戦者に、獣のように襲いかかった。終了ゴングが鳴り、勝利を確信したように両拳を突き上げた。結果は3者3様のドロー。「すいません。勝ちたかった」と謝ったが、ベルトは守った。
8回を終えてジャッジ2人が2点差と4点差でカサレスを支持。「ラスト2回は絶対に(ポイントを)取らないと」と焦った名城だが、インターバルで藤原俊志トレーナーから「右が当たる。自信もって行け」とゲキを飛ばされ猛反撃。愛称の「サムライ」のように、愚直に前進した。「へたくそでもいいから、ワイルドに行こうと思った」。右ストレートを中心にポイントを連取した。
挑戦者攻略のヒントは、ナゴヤドームのマウンドにあった。中日ファンの藤原トレーナーが山本昌投手の投球を見て「ボクシングにも緩急が大事」と思いついた。単調な攻めに陥る傾向がある名城は、パンチに緩急をつける練習を積んでいた。同トレーナーは「終盤に右が当たったのはそのおかげ」と胸を張った。
名城は4月に挙式したリングサイドの妻智子さん(27)に「来年も何とかこれで食っていけるな」と優しく語りかけた。この日朝、便せん6枚分の手紙を妻から初めて受け取った。「将来は心配しないで」との内容。収入のことは気にかけず、ボクシングに集中してほしいという配慮がうれしかった。「『負けてもいい』とも書いてました」。包み込むような愛情が、大きな支えになった。
「1位の選手と互角以上の戦いができたのは自信になる」。最初の王者時のV2戦は、受けに回って指名挑戦者に完敗した。今度は挑戦者魂で最後まで勇敢に戦い抜いた。屈辱にまみれた2年前の敗戦を糧に、精神面で確かな成長の跡を残した。【大池和幸】

