被災地に「元気ですか!」が響き渡った。プロレス団体IGFの会長アントニオ猪木(68)と同エグゼクティブプロデューサーの蝶野正洋(47)が5日、津波や原発事故の影響で多くの避難民を抱える福島県いわき市、宮城県東松島市の避難所3カ所を訪問した。救援物資のほか、得意のパフォーマンスで被災地を激励。復興へ向かう市民に勇気を与えた。

 「燃える闘魂」が被災地に元気を届けた。飲料水3万リットルや特製タオル5000枚などの救援物資を持って登場。到着直後から大きな声を張り上げた。出迎えた被災者に「元気ですか!」と叫ぶと、間髪入れず「元気です!」の返答。お決まりのあいさつで避難所に明るさをもたらした。握手を交わしながら「(各所の許可が出るまで)なかなか来られなかったけど、やっと来られた」と感慨深げだった。

 一抹の不安もあった。これまでもホームレスのための炊き出しを行うなど、積極的に慈善活動を行ってきた。だが、被災地の惨状を目の当たりにし、本音を漏らした。「本当は『元気ですか!』と言おうか戸惑った。言ってもいいものか…」。迷う猪木をその気にさせたのは、被災者の生き生きとした目だった。「皆さんが思っていたよりも元気だったので、こっちが元気をもらった感じ」。逆に東北の人たちに後押しされ、力いっぱいの「元気ですか!」が自然に口をついた。

 モヤモヤが吹っ切れると、調子が出てきた。「日本中が自粛、自粛じゃあ何もできない。元気のあるやつが立ち上がれ!」。有言実行を貫く猪木の姿に、被災地も勇気づけられた。お年寄りは握手とサインを求め、若者は「闘魂注入」のビンタをねだった。強烈な平手打ちをくらった遠藤昇太さん(29)は「暗い気持ちと一緒に、意識が飛びました」。ほおをさすりながら感激した。最後は全員で「1、2、3、ダ~!」と絶叫。避難所に笑顔があふれた。【湯浅知彦】