「怪物」井上尚弥(21=大橋)が伝説の王者に引導を渡す。30日のWBO世界スーパーフライ級タイトルマッチの調印式が28日に都内で行われ、前日の予備検診に続き、王者ナルバエスと対面した。世界王座を通算27度防衛した世界的名手を前にも「思ったよりオーラは感じなかった。そろそろ世代交代の時。自分が王者になります」と堂々と宣言した。

 ライトフライ級時代の減量苦から解放され、リラックスムードの井上とは対照的に、ナルバエスは緊張感を放った。調印後のグローブチェックでは、渡された赤色のものに手も付けず、井上と同じ黒色に変更するように要望。ルール上は色は自由に選べるため「2人とも同じ条件で戦うのが理想。赤より黒の方が見えにくいと判断した。王者としての意見を述べた」と険しい表情で話した。

 一連の王者の動きについて、大橋秀行会長は「それだけ危機感を持っているということ」と分析。「千代の富士が(後の)貴乃花に負けて引退を決めたように、伝説的な人は新鋭にやられる」と愛弟子の勝利を予言した。

 また、中継するフジテレビは、井上が勝利し8戦目での2階級制覇となれば、世界最速であることも発表。井上は「記録にはこだわっていない。まずは王者になること」と気を引き締めていた。【奥山将志】