横綱白鵬(29=宮城野)が3日、出稽古先の春日野部屋で手荒い相撲を連発した。春場所(8日初日、大阪・ボディメーカーコロシアム)で初対戦が確実な東前頭2枚目の佐田の海(27=境川)を客席近くまでぶっ飛ばすと、左目に古傷がある小結妙義龍(28=境川)にもかちあげを見舞って“KO”。16戦全勝と仕上がりは良好も、初場所後の審判批判問題の影響か、心の乱れを感じさせた。

 白鵬が圧倒的な力を示すように、格下を痛めつけた。最初の標的は、同じく出稽古で来ていた佐田の海。春場所で初対戦確実な相手を、まずはあいさつ代わりに押し出し、約2メートル離れた客席近くへ吹っ飛ばした。

 初顔が想定される相手と場所前に胸を合わすのは、白鵬の恒例行事。感触を確かめるとともに、これまでも恐怖心を与えるように強さを見せつけてきた。この日も、問題なく5連勝。歯が立たなかった佐田の海は「力を出させてくれない」と、ため息をついた。

 荒稽古はさらに過熱する。続くターゲットは、初日に顔を合わせそうな妙義龍だった。連勝で迎えた3番目。右から強烈なかちあげをヒットさせた。昨年9月に左目網膜剥離の手術を受けた妙義龍は、フラフラと後退。その後、古傷を気にするように土俵外に出て、再び稽古に戻ることはなかった。

 高安、豊響にも力の違いを見せて計16戦全勝。最後のぶつかり稽古では、相手の栃煌山が右足を痛めて途中交代する“突発事故”まで起こった。白鵬に責任はないものの、さすがに終了後は症状を気遣うように言葉をかけた。顔をしかめた栃煌山は「今日はすみません。(足は)大丈夫です」と話すだけだった。

 白鵬は稽古後、報道陣の問いかけには無言で引き揚げた。夜に大阪市内で開かれた前夜祭では「昨日から出稽古を始めて順調に来ている」と好仕上がりを強調も、荒稽古を見ると心の揺れを感じさせる。初場所後の審判批判騒動を、まだ引きずっているのか。大鵬に並ぶ2度目の6連覇が懸かる春場所まで、残りは4日だ。【木村有三】