名古屋場所(12日初日、愛知県体育館)で初優勝を目指す大関稀勢の里(29=田子ノ浦)が6日、横綱白鵬(30)と三番稽古を行った。愛知・長久手市内の部屋の宿舎に横綱日馬富士、新大関照ノ富士らも出稽古に来たが、狙いは白鵬だけ。1年半ぶりに出向いてきた最強横綱と7勝8敗とし、手応えをつかんだ。

 稀勢の里の眼中には、白鵬しかなかった。2場所連続で敗れている照ノ富士に土俵に入る隙すら与えず、白鵬と稽古場を独占。15番で7勝と肉薄しても「稽古場ですから」とけむに巻いた。得意の左四つで組むと一気に寄り切るなど、らしさを出せたことには「自信を持ってやっていきたい」。これまでとは違う手応えも感じていた。

 白鵬が自身のもとへ出稽古に来たのは、昨年初場所前の二所ノ関一門の連合稽古以来、1年半ぶり。当時は白鵬に完敗し、綱とりの懸かった初場所も7勝8敗と負け越した。同夏場所では鶴竜に横綱昇進を許し、今年5月の夏場所は照ノ富士に初優勝の先を越されるなど、悔しさは誰よりもある。三番稽古の後には、歩み寄った伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)から「このままでは横綱との差が埋まらないぞ」とハッパを掛けられた。5分ほど話し込んだ内容については伏せたが、期待の表れでもある。

 内容の濃い15番に「もうちょっとやりたかったんですけどね、体がこたえた。当たりも重さも違う」と話す表情も明るかった。名古屋場所まで残り5日。これ以上、辛酸をなめるつもりはない。【桑原亮】