横綱白鵬(31=宮城野)が、荒々しく7勝目を挙げた。関脇嘉風(34)を寄り切り、そのまま足を取って土俵下へと投げつけた。大潮を抜く歴代単独3位の通算965勝目も、嘉風の体をまともに受けた井筒審判長(54=元関脇逆鉾)は左足を負傷。救急車で大阪市内の病院へ運ばれる事態になった。

 白鵬が、厳しく攻めた。張り手とかちあげを繰り出し、嘉風を追い詰める。最後は寄り切り、嘉風の左足が土俵から出た直後だった。右足を持ち上げ、土俵下へ力ずくで投げつけた。

 4日目に、土俵を割った隠岐の海をダメ押しで突き飛ばしたばかり。またも土俵際で荒い動きを見せたが「足があったんでね。持ち上げてみました」と悪びれた様子はない。「土俵を割っていたのが見えなかったのか」という問いにも「まったく(見えなかった)ですね」と話した。

 八角理事長(元横綱北勝海)も「相手の足が出てたのは、あの体勢なら分からなかったんじゃないかな。今日は、流れだったような気がする」と、ダメ押しにならない見解を示した。

 ただ、この日の荒い相撲では“被害者”が出てしまった。土俵下にいた井筒審判長だ。まともに、嘉風の体がぶつかり、倒れ込んだ。左足を負傷し、車いすで医務室へ。その後、弟子の鶴竜らが心配して駆けつける中「念のため。レントゲンを撮りに行く」と言い残し、救急車で病院へ運ばれた。わずかに笑みが浮かぶも、激痛が走るのか顔をしかめる場面もあり、今日9日目から休場する可能性が高まった。

 大潮を抜く歴代単独3位の965勝目に、白鵬は「目指せ3人目の1000勝。これからです」。記念星に満足げだったが、落ちる角度がずれていれば観客に負傷者が出た恐れもあった。またも、後味の悪さが残った。【木村有三】

 ▼通算勝利 白鵬が965勝。大潮を抜いて歴代単独3位。