西前頭筆頭の御嶽海(24=出羽海)が横綱鶴竜も破った。相手が出し投げに行こうと下がった一瞬のすきを見逃さず、前に出て押し出した。2日目の日馬富士戦に続いて今場所2つ目の金星。1場所で2個の金星獲得は、昨年秋場所の隠岐の海以来となった。これで上位の全勝は早くも横綱白鵬と大関稀勢の里の2人だけ。平幕も貴ノ岩ら3人となった。

 御嶽海がまたも座布団が舞う光景を、土俵の上で眺めた。突っ張りにきた鶴竜に食らいつき、土俵際に引かせた。右に回り込もうと動く横綱に、負けじと足を動かしてついていき、前のめりになりながら頭をつけて押し出した。「1場所で(金星を)2つ取れるとは」と驚きの表情。八角理事長(元横綱北勝海)は「本当に素晴らしかった」と賛辞を贈った。

 予兆はこの日の朝稽古にあった。疲労を感じて軽めの調整で済ませたが「崩されてからの切り替えが早い」と鶴竜を分析。「そこでまた1手いく」と、攻めの姿勢を緩めないイメージを土俵の外で描いていた。それに加え「引かせたらちょっとは勝機はある」と、師匠の出羽海親方(元前頭小城ノ花)からもらったアドバイスが、かみ合った勝利だった。

 この日はフィリピン出身の母マルガリータさん(46)が地元・長野県木曽郡から地元後援会の会員ら約40人と、応援に駆けつけていた。初金星を挙げた2日目の夜に、うれし涙を流した母が見守る前で勇姿を見せ「1個目は素直にうれしかった。2個目は母が来ていたのですごくうれしいです。良いところを見せられたと思う」と、照れながら話した。

 29本の懸賞を獲得し計75本は、白鵬の90本に次いで2位と快進撃を見せる。それでも「まだ4日目だから。浮かれてる場合じゃない」と、帰り際に報道陣に頼まれた母との記念撮影を丁重に断った。昨年九州場所1場所で陥落した小結へ、返り咲く準備はできた。【佐々木隆史】