横綱稀勢の里(30=田子ノ浦)が12日、東京・墨田区の野見宿禰(のみのすくね)神社で奉納土俵入りを行った。明日14日に初日を迎える夏場所(東京・両国国技館)は、37年夏場所の双葉山以来80年ぶりとなる初優勝から3連覇がかかる。人気のバロメーターの1つとなる、今場所の指定懸賞数は608本。15年初場所で白鵬が獲得した545本を超えて史上最多となる可能性が出てきた。

 春場所千秋楽とはまるで違う稀勢の里だった。太刀持ちに高安、露払いに松鳳山を従え、土俵入りを披露。負傷した左上腕付近にテーピングはない。「バチン」と響きわたるかしわ手と「ドスン」と鳴る力強い四股を踏んだ。夏場所出場の決断理由を聞かれると「ま、力士ですから」と一言。「腕は2本あるからね。少しでも力が入れば相撲になる。それ以上に良くなっていますから。あとは自信を持って」と自らの口で決意を語った。

 注目度も高い。今場所の稀勢の里への指定懸賞数は、300本だった春場所の2倍以上となる608本に上ったことが分かった。平均すれば1日約40本で、相手を含めた取組次第で懸賞は50本近くになる。現在最多の15年初場所の白鵬の545本、自己最高だった春場所の424本を更新する可能性がある。今場所15日間の全取組への懸賞は過去最高の合計2219本で、稀勢の里への指定懸賞だけで3割近く占める。

 現在、1つの取組への懸賞数の上限は60本。しかし初日の稀勢の里の一番には、本人への指定と「結びの一番」への指定だけで、当初は65本になった。そのため、複数出しているものを減らしたり、他の取組に移すなどして53本に調整したという。相撲協会関係者も「こんな数字は見たことがない」と驚いた。

 初日に小結嘉風、2日目に平幕隠岐の海との対戦が決まった。「平常心でやるだけですよ」と落ち着いている。「不安は不安でありますけど、それを払拭(ふっしょく)するためにも稽古するしかないですから。その分、場所前にいい稽古ができましたから。あとは本場所やるだけです」。世間の期待を追い風に、双葉山以来80年ぶりの偉業を成し遂げる。【佐々木隆史】