86キロ級決勝でバルセロナ五輪78キロ級金メダリストの吉田秀彦(25=新日鉄)が、昨年の世界選手権王者中村佳央(24=旭化成)に得意の内またで一本勝ちし、1990年(平2)78キロ級Vに続き大会史上初の2階級制覇を果たした。これで来年の世界選手権、2年後のアトランタ五輪へ向け、ライバル中村を一歩リードした。78キロ級では中野陽一(21=東海大3年)が初優勝を飾った。
吉田は、真っ向からの得意技で決着をつけた。現役の世界王者同士の黄金対決。3分14秒、中村がただ一度見せたスキを見逃さなかった。左のつり手をやっとつかむと、大きく左足をはね上げた。中村は宙を舞いながら必死に体をひねったが、間に合わずに一本。瞬間で勝負をかける吉田らしい一発だった。
「とりあえず組んでしまおうと思った。二人とも倒れていなかったから、ポイントがほしいなという場面。でも、一本じゃないかな」と、吉田は完全に決めた実感がない。負けた中村も「有効ぐらいかなと思った」と判定には納得していない。しかし、中村は「あのままいっても負けていた。引き手、つり手をどう殺すかだったが、やっぱり強い」と完敗を認めた。最も警戒していた内またをかけられただけに無念さを隠せない。山下泰裕監督(37=東海大教)は「一瞬のスキをうまく入った。あそこは吉田じゃなければ入れない」と、吉田のタイミング、技のキレを絶賛した。
吉田にとっては86キロ級の本格デビュー戦だった。減量苦に耐えられず、今年から階級をアップ。都内の新日鉄浜田山寮で吉田の食事を毎日つくる松村蔚子(しげこ)さん(52)は「今回は、ごはんがちょっと減っただけ」と話し、減量苦はなかった。大会直前に首、背中を痛めていたが、減量がなければ体は動く。決勝まで5試合で、内また、大外刈り、大内刈り、払い腰、払い巻き込み、出足払い、内また返しとポイントになった技が7種類もある。涼感さえ感じる立ち技の思い切りが、この階級でも存分に生かされた。
吉田は「喜びよりホッとした感じ」と、まだ満足していない。「また挑戦する」と言う中村の巻き返しがあるからだ。「今日のは世界王者ということで佳央(よしお)は気持ちが守りに入っていた。これからはガムシャラにくるだろう。まだ並んだだけ。始まったばかりですよ」と、最後は追われる立場に気を引き締めた。【織田健途】


