松井玲奈(24)へ向けて、同じ初期メンバーの松井珠理奈(18)と大矢真那(24)が、手紙をしたためていた。本編の最後の前の曲「手紙のこと」の間奏中だった。松井珠が「玲奈、今日は私たちが、お手紙を書いてきました~」と切り出した。

 まずは大矢。

 大矢 玲奈へ。玲奈自身はそんなつもりはないかもしれないけれど、最近の玲奈はとってもすがすがしく、凜々しく、何よりも気持ちをありのまま言ってくれます。その姿は、ものすごく大きな荷物を下ろしたように見えます。その玲奈を感じて、私は初めて玲奈の背負っていた荷物は、やはり7年分の重さだったんだなぁ。それも長く務めたダブルセンターとしての重さだったんだなぁと、秘かに感動すらしていました。玲奈と私の歴史は、巻き戻せば90%は距離のある関係でしたね。お互い、相手に不機嫌な感情をぶつけるタイプじゃないから、感情がつかめない。だからこそ、距離もどんどん離れていく。今じゃあ「同期のガツガツ来る感じが嫌だぁ」なんて言ってくれるけど、昔の玲奈なら考えられないよね。私もガツガツなんて自分には関係ないって聞いていたけど、後日、記者さんに『「いつ卒業するの?」なんて、よく本人に聞けたね』って言われて、こういうところかとちょっと反省しました。お話は変わり、あれは玲奈が初めてAKBさんの選抜に入ったころだったかな。あのころは珍しくなかった円になっての話し合いのとき、玲奈が「もっと外に向けて意識を持たなきゃダメなんだ」って力説したときがありました。ただ、私も含めて、一気に飛び出した玲奈に見えた未来は、そのときの私たちには理解できませんでした。今思えば、玲奈の言葉はとても重要だったけれど、逆にあのころのSKE修行時代に、すでに視線のベクトルが、その方向に向いていたことが、すなわち、今ここに立つ松井玲奈になるべくしてなった、とも言えます。松井玲奈はSKEの夢です。松井玲奈はみんなの目標です。玲奈、長い間ありがとう。そしてお疲れさま。真那より。ありがとう。

 「うれしいです」という松井玲と照れるように抱擁した。続いて松井珠が読み始めた。

 松井珠 玲奈ちゃんへ。本当は言いたくないけど…(涙)、卒業おめでとう。玲奈ちゃんと私は対照的だから、よく玲奈ちゃんが月で私が太陽みたいな存在って例えられることが多かったけど、私にとってはずっと玲奈ちゃんが太陽のような存在でした。それは卒業発表をした後もそう。玲奈ちゃんとの最後がどんどん増えていくそのたびに、寂しくなって、でも、そんなとき、玲奈ちゃんのキラキラした笑顔を見るたびに、その姿に私が背中を押されていました。ありがとう。でも…(涙)、玲奈ちゃんがあるとき「私のために泣かないで」って言ったよね(号泣) 「そんなこと言わないで」って、正直胸が苦しくなりました。「もっと寂しくなるじゃん」って思ったからです。だって、玲奈ちゃんのためとかじゃなくて…(涙)、玲奈ちゃんとミュージックビデオを撮影するのも、握手会を隣でするのも、AKBの選抜で一緒に頑張るのも、一緒にレッスンするのも、全部が最後だなぁって思ったら涙が止まらなかったの(号泣)。今まで素直になれなかったけど、やっぱり私は玲奈ちゃんのことが大好きです(号泣)。だからこうやってSKEのメンバーとしてステージに立って隣にいることが今日で最後なんだと思うと、寂しくてどうしていいか分からないけれど…。でも玲奈ちゃんには安心して卒業してほしいので、もっと強くなります! 気が付けば、こんなにもたくさんの仲間がいて、こんなにもたくさんのファンの皆さんがそばにいてくれて、すごく心強いです。1期生はもう2人になっちゃうけれど、これからもSKEを守るから、玲奈ちゃんはSKEのことをこれからも見守っていてください(笑顔)。これは私からの最後の約束です。玲奈ちゃん、本当に今までありがとう。そしてこれからもよろしくね~。

 途中で何度も号泣したが、最後は笑顔で締めることができた。それを姉のような視線で見守っていた松井玲は、ほほ笑みながら「ありがとう。よく頑張ったね」と松井珠をねぎらった。松井珠は「平凡な便せんに青いインクで書きました~!」と、恋人にラブレターを差し出すように、手渡した。

 そして、最後は「とてもうれしいです。ありがとう」と応えた松井玲からも「実は私からもみんなに手紙を書いてきました」と読み始めた。

 松井玲 メンバーのみんなへ。これからのSKEを作っていくのはみんなです。みんながSKEのセンターです。一生懸命、がむしゃらになった後の景色は、本当にすてきなものです。見えますか? みんなと一緒に今この景色を見ていることが、とってもすてきです。とってもうれしいです、本当に。私の大好きなSKEを、これからよろしくお願いします。

 松井珠から「ありがとう」と寄り掛かられると、「頑張って、みんなのことを応援してるから」と優しくなでていた。