日本舞踊の最大流派「花柳流」の四世家元花柳寿輔(本名花柳寛)氏(85)と対立していた花柳貴彦(本名青山貴彦)氏(40)が、流派から不当に除名されたとして起こした訴訟で、東京地裁は25日、除名を無効とする判決を言い渡した。

 判決によると、2007年に三世家元が公式に後継指名しないまま死去した後、寛氏が四世家元を襲名したが、貴彦氏は自分が後継指名を受けていたと主張。貴彦氏は14年4月、必要な手続きを経ずに上演をしたなどとの理由で、寛氏から除名処分を受けた。

 判決理由で岩井伸晃裁判長は「寛氏は自らの地位を固めるため、貴彦氏を排除する意図があったとうかがわれる。除名に相当するほどの重大な行為ではなく、家元の裁量権を超えている」と指摘した。

 訴訟では、流派内部の処分の是非を裁判所が判断できるのかが争点になったが、判決は「地位が剥奪されると日本舞踊家としての職業活動ができなくなる不利益があり、地位確認は司法審査の対象になる」と判断した。

 一方、貴彦氏が求めた損害賠償は棄却。家元争いについては「三世家元が貴彦氏に継承させる明確な意思があったとは認められないが、寛氏が自分の就任を強引に推し進めた側面は否定しがたい」と言及した。

 判決後に都内で記者会見した貴彦氏は「不当な処分について法的にきちんと取り上げ、守ってもらえて感謝している。花柳流の一員として尽力していきたい」と話した。