シンガー・ソングライター吉田拓郎(70)が27日、パシフィコ横浜国立ホールで、コンサートツアーの千秋楽公演を行った。開演前に取材に応じ、ノーベル文学賞に選ばれた米シンガー・ソングライターのボブ・ディラン(75)への思いを語った。単独で報道陣の取材に応じるのは、04年の静岡公演以来12年ぶり。

 学生時代、ギターとハーモニカで自由に歌うディランのスタイルに大きな影響を受けた。「高校生ながらに、衝撃を受けたんです。それで、彼のものまねから入って。それは今も続いているんです」と話し、「ディランのような放浪の旅に憧れて、家出とは扱われないような、旅行のような家出をしたこともあります」と明かした。

 受賞については「とにかくビックリした。すごいことだと思う半面、ボブ・ディランはどう考えているんだろうかと率直に思います」。今月13日に受賞が発表されて以来、ディランは沈黙を貫いている。選考主体のスウェーデン・アカデミーもディランと連絡がとれない状態が続いている。吉田は「ボブ・ディランは心の奥に何かを強く持ってるんだけど、それを生涯、人には明かさないんじゃないかと思う。心の底は僕らには一生見えないと思うし、そういう人がいてもいいと思う」と持論を展開した。

 ライブでは、ディランの名曲「風に吹かれて」をカバー。「男っていうのは、風のように生きたいんだよね」と呼びかけ約4700人を沸かせた。12月10日にはストックホルムでノーベル賞授賞式がある。ディランの出欠は不透明だが「比較したらぶっ飛ばされるけど、僕は昔、(日本)レコード大賞にジーンズで行ってひんしゅく買ったことがある。えんび服なんか着ないで、ボブ・ディラン的なファッションで出ていったらかっこいいだろうな、と単純に思いますよ」。自分が受けた影響の大きさを感じながら、ディランの背中を押していた。【横山慧】