歌手で声優の中島愛が、約3年間の音楽活動の休止から復帰し15日にニューシングル「ワタシノセカイ」をリリースした。リリースを記念した単独インタビュー2回目は、活動休止の真相と空白の3年間について語った。【村上幸将】

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 13年12月、アニメ業界に激震が走った。

 「中島愛、本人名義での音楽活動を無期限休止」

 08年、アニメ「マクロスF」のランカ・リー=中島愛名義として挿入歌「星間飛行」で歌手デビューしオリコン5位を記録。09年にソロ名義での音楽活動も始め、5周年記念プロジェクトを終えた中での発表だった。14年2月から1年、テレビ朝日系で放送されたアニメ「ハピネスチャージプリキュア!」の主人公・キュアラブリーこと愛乃めぐみ役が決まっており、歌手、声優として勢いが乗っていた時期だった。

 -16年12月の復帰ライブで「気持ち、体のキャパシティーを超えてしまった」と休止当時の思いを明かしたが3年は長かった?

 振り返ってみると…過ごしている間は毎日、考えることはあったし、あっという間だった気もしていましたけど、あらためて考えると長かった。スケジュールがたくさんあって疲れているわけではなく、自分から何かに応えられる熱量が足りなくなってしまっている感覚があった。やはり歌うには、自分に伝えたいことがないとダメだし、ライブをするにしても自分が先導して1番盛り上げていく立場でなければいけないと思うんですけど…自分が新しいことが出来るっていう自信が、どんどんなくなっていった…それが1番、辛かった。どうして出来ないんだろう、どうして湧いてくる何かが足りないんだろう…自分に対しての不信感みたいなのが、すごかった。

 -歌手としても声優としても、勢いがある時期に活動休止したのはなぜ?

 周りには続けてほしい、続けてもいいんじゃない、という人もたくさんいて…音楽活動に関してですけど、どうしようかな、という部分もありましたが、続ける勇気もあるけれど、立ち止まる勇気もあると思って決心しました。前提として、音楽活動と声優活動は、あまりリンクさせていないんですね。音楽活動を休止するにあたって思った精神面と、声優活動に対して向かっていく精神面は別。キャラクターで演じるかどうかと、自分自身を表に出すか、というのは気持ちがかなり違っていて。プリキュアは子どもたちの糧となる可能性のある作品ということで、自分自身もアニメで育ってきましたし、子どもたちがどう思い、どう受け取って大人になってくれるのかな、という部分の責任をすごく感じていました。

 -でも音楽、声優活動ともに離れると決断した

 自分1人でやれることと、みんなと一緒だから出来ることは違うけれど、連動しているものだと思う。どちらかをやめて、というよりも、人として休みたかった。お仕事をお休みしたけれど、責任もありますし、今までお世話になってきた作品の新規の録音などは、返したい気持ちがあり、させていただきましたが、リセットしたいということが1番。区切りをつけたかったんですよね。中途半端は嫌だった。相当、ご迷惑をかけたりとか、心配してくれる方がいたりとか、それはすごく分かっていましたし、ずっと気にしていましたけど…そこはお休みを優先してしまいましたね。

 -活動休止して見える風景は変わった? 逆に変わらないことはあった?

 だいぶ変わりました。お仕事を続けながらも、リスナーとして音楽を聴いたり、視聴者になって作品を見たり…という部分もありつつ、どうしてもステージに立っている自分の方が、割合が多くなってしまっていた。自分のことを客観的に見たりとか音楽、アニメシーンの全体を俯瞰(ふかん)する感覚が鈍ってきた感覚があったんですね。お休みしている時は、純粋にリスナーとして、作品を受け止る側として楽しめた部分が大きくて。だからこそ、あぁ、音楽ってこんなに人を救ってくれるんだなぁとか…すごいベタですけど。作品を見て、こういうふうに心を動かされて、明日もこうやって頑張ろうと思えるんだなぁ…と、当たり前のことをフレッシュに感じられたのが、すごく変わったところだと思いますね。

 -その感覚は復帰後、プラスになっている?

 すごく大きいと思います。もちろん、活動しながら磨いていくべきものだと思いますけど、自分の中ですり減ってしまっていたので、そこの部分をチャージして戻って来られた分、自分をちょっと離れた視点から見て、こういうところが面白いなとか、こういうところは良くないなとか、冷静に見られるように少しずつなってきているのは、すごくいいことだと思います。

 -音楽業界は昨今、パッケージがなかなか売れず、アニメ業界も「君の名は。」のようなメガヒット作が出た一方、制作環境の厳しさを訴える声も多い。復帰は厳しい戦いの道

 戦いたいか…って休止中、自分に問いかけていたわけですよ。正直、歌って、戦わなくても歌えるじゃないですか。1人で歌っていても成立するから…。そこは、いろいろな人に言われました。「辛いんだったら、仕事としてじゃなく趣味として歌っていく道もあるじゃないか」って諭してくれる人もいたし。特に、近しい人ですよね…両親とか、友だちとか、慰めてくれる人たちは、そう言ってくれました。でも…この(プロの)フィールドが好き、という気持ちは変わらなかった。待ってくれる人がいる、というのにかけて、一歩を踏み出してみたんですね。そこに立って、これから時間がたって…1人でも聴いてくれる人がいるんだったら、やろう、やりたいって素直に思えるんです。

 次回は復帰後の未来について中島が語る。

 ◆中島愛(なかじま・めぐみ)6月5日、茨城県生まれ。07年に5000人のオーディションを乗り越え、TBS系アニメ「マクロスF」のランカ・リー役に選ばれ、08年に同作で声優デビュー。挿入歌「星間飛行」で歌手デビューもし、オリコン5位を記録。代表作に09年「けんぷファー」の沙倉楓役、11年「セイクリッドセブン」の藍羽ルリ役、13年「君のいる町」の枝葉柚希役など。