「ビート詩人」の異名を持つ。誰にでも分かりやすい言葉を小気味よいサウンドで包む曲の数々は、メッセージ性も感じる。とはいえ、押しつけも感じず、ストレートに何かを訴えるものではなく、どこか客観性を感じさせる。「自分がこう考えたりとか、悲しいとか、つらいとか、僕は1度も歌ったことはない。できるだけ目の前にあるものを正確にスケッチして、それを曲にする。それが僕のやり方。ソングライターとして日々生きていますから。自分がスケッチしたものを他の人が見て、自分なりの感想みたいなものが、そこにあるんじゃないかと思います」。

 常に聞き手の存在を意識する。日本語を乗せたロックの第一人者の曲作りは計算し尽くされている。「聞き手に言葉を置きにいくような、ライティングを心掛けています。しゃべるように歌う。僕の曲を聴いていると、詞がス、スッと入っていく。日本語の曲でそういう曲は多くはないです。言葉とビート、メロディーが、それぞれの間でつなぎ目がない表現。それを自分のスタイルにしている。佐野元春独特なもので、誰もまねできないものではないかと思っています」。

 小学6年の時、ギターを始め、ピアノを猛特訓して曲作りを始めた。創作活動は50年近くになる。「何でここまで止まることなく続けられるのか、僕もすごく不思議です。音楽に対するリスペクトと情熱は、誰にも負けないぞ、という自負があるので、原動力はそれかもしれない」。

 テレビは持っていない。情報はインターネットやラジオを通じて得る。自分の関心や興味に応じ、情報を集めるコンピュータープログラミングも自分で行う。「その辺で僕を雇ってくれないかな(笑い)。『プログラマーが足りない』とか言ってるから。ミュージシャンをやめても何でもできるぞ、と思っています」。