ブルガリアの首都ソフィアにある国立海外美術館で5日夜、歌舞伎女形のベテラン俳優の尾上梅之助が、化粧や着付けなど舞台に上がるまでの作業を説明しながら実演する「女形ができるまで」と題した催しが開かれた。踊りも披露し、約100人の観客から盛んな拍手が送られた。

 梅之助は女形について深く知ってもらおうと、約20年前から国内外でこうした舞台裏の作業を披露している。

 この日は、観客と向き合って座った素顔の梅之助が手鏡を使っておしろいや紅を塗り、かつらを着けたり着物を着たりする作業を丁寧に紹介した。踊りで恋する女性を表情豊かに表現すると、会場から大きな歓声が上がった。

 梅之助は公演の最後に、東京電力福島第1原発事故に触れ「故郷の福島は大変な状況になっている。家に帰れない人も多い。事故の悲惨さを覚えておいてほしい」と呼び掛けた。

 公演を見たソフィア大の女子学生ビオレタ・ミハイロバさん(19)は「男性の演技だということを忘れてしまった。福島についても、復興に向けて何か協力できればうれしい」と話した。